塩害の牧草収穫

 現在、崖下の揚水ポンプは、6時半に動くように設定されているらしい。だから、俺んちの裏のポンプを6時20分から25分くらいに作動させれば良い。飯を食いながら、時間調整をして、スイッチを入れに行った。一応、これで良いはずだ。
 ところが、牧場に上ってみたら、水は全く汲み上げられていなかった。なんで???
 電話が入り、うちの牛が脱走し、隣の牧場を訪れているらしい。行ってみたら、果たして湾の牛だった。二人がかりで追い戻し、採草地を抜けて無事、湾放牧地に戻すことが出来た。原因は、柵の出入り口になっている棒が、受け金具の幅ギリギリしなないため、牛が頭でこづくと、すぐに脱落してしまうためらしい。前からそうなっていたのだが、それまでは気がつく牛がいなかったようだ。でも、モトツボクミコがそれを覚えてしまった。戻しても、すぐに脱落させて、出てきてしまう。仕方なく、ワイヤーで縛って落ちないようにした。
 でも、一頭足りないんだよな!どこに消えたのだろう?
 サマンサに、ここの牧場の仕事を、覚えてもらった。餌の量とか、おかわりのタイミングと量、人工ほ乳のミルクの調合。北海道と違うので、一通り説明して回った。

 ディスクモアのVベルトを張り直し、ファーガソンで刈り取りに出かけた。
 うまかロールは、2mほどの高さにまで伸びていた。葉が茶色になっていて、見るからに刈り遅れって思ったのだが、よく見ると塩害で葉先が茶色になってボロボロだった。
 チガヤの採草地に行ったら、さらにビックリした。一面、刈れススキ状態だ。春にあった塩害より、格段にひどい状態だ。大風と大波が立ったのに、塩を洗い流す雨が少なかったらしい。仕方ないが、とりあえず半分刈り取ろうと、ディスクモアを入れた。
 チガヤって、堅いんだね。うまかロールを刈り取るときには、ベルトは滑らなかったけど、ここでは他愛も無く滑り、刈り残しが出来る。ディスモアの刃が、減って三角になっている。こうなると、あまり切れないのだ。機械屋さんに注文した。エンジン回転を上げると、パワーで切れるのだが、やがてファーガソンのエンジンが止まってしまった。
「なんじゃ!こりゃー!!」
 負荷のかかる仕事をすると、ファーガソンは機嫌を損ねるという性質は、まだ解消されていない。機械屋さんに相談したら、燃料系の詰まりでは無いかと言うことだ。一旦倉庫に帰り、熱くなったエンジンを冷やす為に、休ませた。

 家に帰ったら、サマンサは居なかった。従業員さんの家に行ったらしい。とりあえず出かける。すると、娘さんとポテトサラダを作っていたらしい。娘さんは、とても嬉しそうだった。お姉さんが欲しかったのかな?俺も、お昼をごちそうになる。
 そこへ、近所の電気に詳しい人が、CSデジタル放送を受信するために、アンテナを着けに来てくれた。大分前に、俺が買ってきた物だ。俺は、取り付けの補助に入った。さすがに詳しい人は、ちょっと長さが足りなかったケーブルを、接続して伸ばす部品も持っておられた。後は、テレビを観る人とアンテナを調節する人、伝言係に分かれて、アンテナの微調整をした。これで、娘さん待望の、CSデジタル放送を観ることが出来るようになった。良かったね。そういう俺んちは、テレビがまだ無い!
 水が上がっていないので、ポンプ小屋に行ってみた。二台あるポンプを触ってみたら、1号ポンプが熱くなっていた。とりあえず、動いてはいたらしい。でも、なぜ水を汲み上げなかったのだろう?エアを噛んでいたのかな?そう思って、手動で作動させてみたら、ちゃんと圧力は正常値まで上昇した。なんで???必要量まで、マニュアルでポンプを動かした。
 約二時間後、ポンプを止めに行ったとき、再度プログラムを組み直した。

 燃料系の修理に当たる。
 ファーガソンには、フロントローダーが着いていて、とても作業しづらい。先に、燃料ポンプを調べるべきと言われたので、タンクからポンプまで来ているホーズを外し、ギロチンの様になって咳き込みながら、ホースを吸った。ゲホゲホッ!やがて、軽油が口の中いっぱいに入ってきた・・・あまり美味しくない!ホースを元に戻し、出口側のホースを外し、手動レバーを動かしてみた。すると、軽油がピュッピュッと、勢いよく飛び出した。ここは異常なし!
 となると、考えられるのは、燃料フィルターの詰まりか?すぐに注文した。さて、いつ届くだろう?
 今日も、少年はやってきた。いろいろ遊んだらしく、嬉しそうだった。ポパイに乗りたいと注文があった。刈り取りが終わったね!来るなら、涼しくなった夕方が良いな。ポパイのために・・・。
 サマンサと、牧草の肥料2トンを取りに、港に行った。パレットの上に乗っていたら、あっという間に済む作業なのだが、100袋全部を、ユニックの荷台に手で乗せた。お疲れさん!
 温泉に行って汗を流し、ヨネ風ゴーヤチャンプルを食べてもらった。