健康診断の日

 健康診断があるので、早朝しかご飯を食べることができなく、その後は水も飲んではいけなかった。検診があるのは、船が着く二時以降だ。
 しおりはとても巨乳なので、子牛が吸い付くと痛そうだった。昨日は、蹴られて吸い付けなかったので、人工初乳をほ乳瓶で飲ませ、免疫確保だけはした。今朝は、ぎこちないけど、一応飲んでいた。名前は、『なな』(華春福)と決定した。
 朝から、太陽がとても元気だった。気温はぐんぐん上昇し、じっとしていても汗が出た。
 でも、晴れた日は貴重なのだ。大牛舎の大屋根に、穴が開いていて、そこから激しく雨漏りをして困っていた。今日は、それを直すことにした。不用意に屋根に上ると、スレートを踏み割って、雨漏りをひどくする。丁寧に歩いた。
 屋根板を止めている極太傘釘を抜き、修理用のスレートを差し込んで、傘釘で留めるだけだ。おお!文章で書くと、なんと楽そうなことか!それほど大変な作業ではないが、やろうと決心するまでには、結構時間がかかったのだ。日に炙られて、猛烈に脱水症状が自己主張をし始めたので、水を飲んでしまった。健康診断のために、健康を害したら、意味がないのだ。
 もう一カ所、大規模に割れている場所があるのだが、ここは後日ね。

 大浦の牛が、一頭も来なかったので、迎えに行った。朝日が差しにくい西斜面に行ったと予想して、放牧地の奥に向かった。声や口笛で牛を呼びながら、どんどん歩く。これだけ遠ければ、声も届かない。最初に出会ったのは、カズエだった。可愛いんだ。
 結局、ここには10頭の牛が涼んでいた。他の牛は、どこに隠れているのだろう?
 
 船がやってきて、待望のスイカや、ベーコンとブツブツ交換したアジの開き!お肉屋さんから大量の・・・。
 急いでセンターに行き、レントゲンやら胃検診やら・・・。沢山の放射線を浴びた。原発放射能漏れの時、マスコミはマイクロシーベルトとミリシーベルトをゴチャゴチャにして、一般の人の不安をかき立てていたが、レントゲン一回分とか説明したら、みんな過剰反応することもなかったろうに・・・。
 血圧を、若くて綺麗な保健師さんに測ってもらいドキドキしたのだが、値は思ったほど上がらなかった。70の110くらい? 好きなものを食べたいだけ食べているから、きっと太ったと思っていたが、1kg減っていた。今日は昼飯を抜いたから、その分軽かったのかな?
 
 湾放牧地に、なつこ(勝忠平)の種付けに行った。
 真っ先にかけてきたのは、隣の牛(百合茂)だった。うちの放牧地が好きで、三段張りの鉄条網を体重で押しつぶし、血まみれになってやってきたらしい。そんなにうちが好きなら、うちの子になるかい?
 この子がうちに来たがる理由は、牧草が豊富なだけでなく、こちらの牛は若くて、自分の言いなりになるからだ。飼い主が迎えに来たが、飛び跳ねながら逃げたあげく、うちの牛を引き連れて隣に逃げていった。
 うちの牛だって、隣にいるおっかないおばさん(牛ね!)にド突かれるのは怖く、餌だよ〜と呼んだら寄ってくる。そこを、こちらに追い込んだ。
 なつこは、素手で鼻輪をつかめるほど、人懐っこい。まだわく場を作っていないので、柵に縛って種付け・・・。
 種付けボンベは、ひっくり返ったら、中にある貴重な種が駄目になり、大損害だ。俺は常日頃、保険としてひもで縛るよう心がけている。でも、新しい放牧地への道は、想定外に揺れた。昨日窒素を補給したばかりだったので、こぼれても中には沢山の液体窒素が入っていた。でも、蓋の無いキャニスターに入っていた精液のストローは、ボンベの底に沈んでしまった。