暑い日

 今日は、男の子一人が、手伝ってくれた。二日目なので、いくつかの仕事は一人でやってもらい、俺は別な仕事をすることができた。子牛の餌やりって、簡単そうだが、与える量や速度、その間の観察など、とても重要な仕事なのだ。
 空が明るくなり、晴れ間も見え始めた。
 雨漏りする事務所の屋根に上り、防水対策を始めた。これまでは、雨漏りする事務所の上だけに、樹脂を塗って固めていたのだが、新たな雨漏りが始まったので、屋根全体に広がっているヒビを中心に全体に樹脂を塗るつもりだ。まだ水がたまっていたので、ほうきでかき出す。ちょっと乾いたところで、下地作りの樹脂をヒビに塗った。このまま、数時間乾燥させる。
 気温が上がり、放牧牛の集まりが、さらに悪くなった。声をかけて、ちゃんと帰ってくるのは、カズエ(第一花国)くらいかな?この牛は、自分の名前を理解しており、人が大好きで体をすり寄せてくる。
 
 あまりに暑いので、海に行った。
 波は静かだが、水はうっすらと濁っていて、透明度は3〜10mと場所によって大きな差があった。
 先日よりは、コンディションは悪くない。回遊魚を狙って、沖に出る。
 回遊魚・回遊魚・・・と探していたら、やってきました回遊魚。40cmにも満たないシマアジの群れだ。カンパチやギンガメアジはとても愛想が良いのだが、シマアジやカスミアジ、ツムブリなどは、愛想がないので近寄れない。まとも小さいし・・・。
 水深10m以上の深場に行ったら、海底に紫色の綺麗なハタが・・・。
「これって、アカジョウではないの?」
銛を構えて潜ってみたが、さりげなく射程の外を逃げつつ、岩ノ下に潜り込んだ。一旦浮上し、しばし息を整える。10m以上だって潜れるさ!そこにいる魚を捕れるならね。だが、4mの銛は、穴付きには適していない。潜って穴に合わせて銛の向きを変えようとしたが、長すぎて岩に当たり向きが変わらない。しかも、穴の形が複雑で・・・。あきらめて浮上した。
 アジアコショウダイがいたので、銛を構えて潜る。この魚は、恐怖心より好奇心の方が強いので、あまり逃げない。
 結局、カンパチやギンガメアジは来なかった。仕方なく、波打ち際のメジナポイントに戻る。
 温泉が湧き出ている場所に、ボラが群れている。カメじゃあるまいし、湯治って事はないと思うのだが、温泉に発生する藻などを餌にしているのかな?
 ボラは、河口などの汚れやすい場所に住み、環境汚染に染まりやすい。だから、臭いとか汚いとか言われて、食べる人がいなくなっていた。
 でも、ボラはとてもおいしい魚で、世界的にも重要な食料だ。離島なら、汚染には無縁のおいしいボラに会える!
 接近すると、砲弾のようにすごい速度で逃げる。波に揺られながら、俺の脇を高速ですり抜けようとした一匹を仕留めた。

 昼飯から帰ったら、予定日より12日遅れのしおりが一次破水していた。他の作業をしながら、お産の進行を待った。
 大牛舎の子牛部屋の床に、発酵促進剤を散布した。面積が広いので、5kg5000円分もかかった。こんなに高くては、気軽に散布できない。米ぬかなどに菌を移植して、増産してから使うことにしよう!
 餌側のしきわらを、全部交換した。敷きわらには、二番草を使用した。
 今年は、牧草がかなり余った。去年の写真と比べても、親牛たちの体格がとても良くなった。牛舎でも、お産を控えた母牛に、惜しげもなく乾草を与えることができた。飛行場で、雑草粉砕ロールをまめに作った事や、放牧地にイタリアンライグラスの種を200kgも播種して、冬の乾草使用量を激減させたことなどが良かったようだ。まだここの牛飼いになれたわけではないが、少しずつスキルアップしていこう。
 夕方になり、しおりがようやく二次破水をした。前足も頭も正常に来ており、苦しんでいたので助産した。滑車は使わなかったが、全体重をかけても。なかなか出てこなかった。
 生まれたのは、大きな雌(華春福)だ。名前は、手伝いに来てくれている留学生に、付けてもらうことにした。
 
 晩飯は、ボラの刺身だ。一匹で十分すぎるほど大きく、コショウダイに手を出す事ができなかった。
 脂は乗っていないが、おいしい刺身だった。新しすぎて、ちょっと堅すぎたけどね。