湾放牧地

 梅雨の晴れ間は、貴重なのだ。
やらなければならないことを整理してみたら、あまりに多すぎて機能停止しそうになってしまった。
 灯台下から二頭を捕獲し、大浦放牧地に運んだ。
 大浦放牧地では、モトツボクミコとタカラを捕まえ、これまで使っていなかった湾放牧地に連れて行った。ここは、一年ほど使っていなかったので、草がいっぱい生えていた。だから、放牧に慣れていない若牛にとっては、えさが豊富で順応しやすいと思う。現在小屋で飼っている5頭の育成牛も、ここで放牧に慣れさせようと思っている。ただ、ここには連動スタンチョンも枠場もないので、捕まえるのも種付けするのも困難である。何とかセメントを確保して、支柱をしっかり立て、スタンチョンを取り付けよう。こうやって、また仕事を増やすのであった。
 放牧には、リーダーとなる牛が必要だ。クミコもタカラも、若くてまだ放牧に慣れていない。だからといって、元気なメスを放したら、たちまち太って繁殖障害を起こしてしまう。だから、名血だけど体の弱いシゲヨに、白羽の矢を立てた。でも、すぐにはつれていく暇がなかった。
 船が入るので、家畜運搬トレーラーを引いて、港に向かった。先日買ったお嬢さん牛が乗っているのだ。血統的にお嬢さんであるだけでなく、とても可愛がられて育った牛なのだ。人に対する警戒心が無く、扱いやすい。だが、多頭飼育されていないので、牛の中でもまれた経験が無いため、気をつけてやらないといけない。長旅で疲れ切っていたのだが、早速ちょっかいを出され、辟易していた。
 獣医さんが来るまでの間、手持ちぶさただったので、意を決して大牛舎の敷きわら交換に着手した。お約束なのだが、始めた途端先生は来た。
 予防接種一頭。妊娠鑑定四頭。四頭とも、妊娠していた。