牧草の種まき

 やると決めたら、一気呵成に仕上げたほうが良い。天気に左右される種まきをチンタラしていると、二度手間三度手間になることが多い。
 早朝から、牧草畑を耕した。作業速度の遅いロータリーで、ゆっくりゆっくり耕した。
 牧草が生えた畑を耕す場合、先にプラウ(鋤)で天地返しをして、表面に生えた植物や雑草の種子を、深いところに埋めてしまってから、ディスクという機械で土を荒く砕き、ロータリーをかけると、きれいに仕上がる。
 だが、残念ながら、この島にはディスクはあるのだが、プラウが無い。仕方ないので、面積の半分は先にブッシュカッターで牧草を粉砕してから、ロータリーをかけた。生えたまま耕すより、土に混ざりやすく、いくらかきれいに仕上がった。でも、それほど高い機械ではないので、中古のプラウを買おうかな?
 昼までに、一回目のロータリーが終わった。日差しが強く、エンジンからの熱風が運転席に吹き付けるので、リアフェンダーの上に座って、足でハンドル操作をした。5時間も低速作業をしていると、眠くなるのだ。
 午後から、二回目のロータリーをかけた。一度土を砕いているので、トラクターのギアを二段高くして使え、作業はかなり早かった。ブッシュカッターで粉砕していない牧草は、ロータリーではなかなか土に混ざらず、イライラさせられた。でも、まぁいいか。土自体は、とてもフカフカになった。
 ブロードキャスターを着けたクボタが、パンクしていた。リアタイヤに大穴が空いていて、そこを無理やり補修してあるのだが、そこが破れていた。タイヤを買わないとダメかもしれない。リアタイヤ二本で、20〜30万円くらいかな?
 クボタに着けていたブロードキャスターを外し、フォード6600に取り付ける。肥料を畑に均一にばら撒くブロードキャスターの中に、肥料と種子を混ぜ込んで入れ、両方一緒にばら蒔くのだ。
 500kgの肥料に、20kgの種子を混ぜて、出発!!土が柔らかくて、2WDのフォードは、走りにくかったが、あっという間に種まき終了。
 重たい鉄製のローラーを取り付け、フカフカの畑を、鎮圧していく。こうすることで、土の水分が抜けるのを防ぎ、種子が発芽しやすいし、根を張りやすい。途中、トラクターが燃料切れで止まってしまい、かなり焦った。この島にはガソリンスタンドが無く、ドラム缶で取り寄せなければならないのだ。災害復旧のため、ホイルローダーを動かすときに、燃料を使ってしまったのだ。ドラム缶の底に残っているわずかな軽油を、缶をひっくり返して集め、かろうじて帰ってきた。一応、種まき作業は終了した。あとは、2〜3日中に、適度な雨が降ることを期待する。でも、根を張る前に大雨が降ってしまうと、全部流れてしまうこともある。

 パソコンを見てもらっていたら、従業員さんの娘が、犬を探しに来た。この犬は、夕方になると姿をくらまし、俺が帰るころまで出てこないことがある。今日は、俺が帰るとき居なかったので、従業員さんと帰ったと思っていた。
 ところが、パソコンの不具合が解消したころ、玄関に犬の気配がして、見に行くとその犬が居た。なんで、自分の家に帰らないで、俺んちに? 
 この犬は、ゴロウやカイトと比較され、頭が悪いと言われることが多い。
 アルバイトのお姉さんが、3匹を待たせておいて、宝探しと言ってあっちこっちにホットケーキを隠したことがあるそうだ。ゴロウとカイトは、隠す様子をよく観察していて、よしと言ったら隠した餌のところを順番に回って食べたのに、そのフユという犬は何が何だかわからず、一つも食べられなかったらしい。
 でもうちの犬は、玄関の戸をあけてもらうために、声を出す知恵は無いんだ。黙って開けてくれるまで待っている。