縄文杉との対面

yonemiki2011-05-19

 朝四時前に起き出し、身支度を調えた。以前から見たかった、縄文杉見学を計画していた。
 縄文杉に会うためには、往復10時間以上、22kmの歩きが必要なのだ。大部分を占めるトロッコ道を過ぎると、急峻な山道や階段が続く。両足半月板を切除し、軟骨がすり減って変形性膝関節症の俺には、ちょっと荷が重いかもしれない。
 出発前に、整形外科医師に相談した。すると、
「間違いなく、痛くなります。どのくらいかは、自分が一番判るでしょう?それでも行きたいなら、いっても良いんじゃ無いですか?」
 登山口までは、一般車両は通行止めで、シャトルバスを使う。5時のバスが出る前に、現場に到着したのだが、飲料水が足りなかったので、買いに戻り、引き返したらバスが出て行くところだった。30分待った。
 いざ出発!
 旅は道連れ。たまたま知り合った人と、一緒に歩くことになった。
 トロッコ道を歩く。枕木の上を歩くと、歩幅を限定されて歩きにくい。長い平坦地の歩きで、膝を痛めないよう、杖を使って気をつけて丁寧に歩く。
 登山客の中には、ガイドさんを雇って、説明を受けながら集団で歩く人もいた。女性や年配の方も多く、時々追いついて、道を譲って貰った。
 時々、大きな屋久杉の切り株や、そこから新たに伸びた木を見かけた。屋久杉は、鬱蒼とした森の中で、わずかな光を受けてゆっくり成長するため、年輪の間隔がとても狭い。同じ直径でも、健全に育った杉に比べ、何倍も時間をかけて成長しているのだ。
 三代杉を見た。初代は、1500年前に倒れたらしい。その残った株から、二代目が成長して、江戸時代に伐採され、三代目はその切り株から伸びて250年ほど経ち、立派に成長していた。悠久の時の流れを感じた。
 トロッコ道が終わり、急な登りになる。木道や木製階段が着けられていた。天気が良く、乾いていたので歩きやすかった。日頃の行いが良いからかな?
 去年台風で倒れた、翁杉を見た。内部が腐って空洞化し、着床植物の重みに耐え切れなくなったらしい。倒れたあとには、大きな空が開け、若木にも成長するチャンスが与えられた。こうやって、森は更新していく。
 さらに上ったところで、江戸時代に切り倒されたウィルソン株を見た。ものすごい大株で、中に入ると、空洞から見える空がハート型に見えた(写真)。
 長い階段を上り続け、夫婦杉や大王杉など、有名な屋久杉の重鎮が次々と見られた。それぞれ、圧倒的な存在感を持っていた。名前がついていなくても、巨大な屋久杉は、それだけで人を感動させる。
 いよいよ縄文杉との対面である。ひときわ高い見学台を上ると、そこに縄文杉が立っていた。樹齢7000年とも言われるこの木は、大きさ的には大王杉と比べて特筆するものでは無いのだが、こぶや太い枝などのバランスが良く、格好良かった。写真を撮っただけで無く、しばらく眺めて、その勇姿を目に焼き付けた。いつまでも、残していきたい自然遺産だと思った。
 近くの休憩所で食事を取り、帰路につく。足を痛めるのは、下り坂である。借り物の杖を使って、膝に体重と衝撃が集中しないよう、丁寧に下った。多少時間が掛かり、上半身を痛めつけるが、せっかくの感動を、後日後悔したくなかった。
ロッコ道に出て、歩調を早めていたら、降るような降らないような霧雨になった。木道は、濡れると足が滑る。膝をかばった歩き方をしたら、滑って危険だっただろう。良かった。
「春雨じゃ。濡れて参ろう。」
カッパを出すのが面倒だし、すぐに温泉に行くつもりだったので、そのまま歩いた。最後の数分は、傘ぐらい欲しかったかな。でも、シャツが湿ったくらいだった。バスで屋久杉自然館まで帰ったが、結構まじめに降っていた。月に35日雨が降るという屋久島で、雨に降られずに縄文杉を見ることが出来て、ラッキーだった。