ポンプ受難

昨夜遅く、体温が低下したと段取りメールが届いた。たぶんこのタイミングだと、今夜遅くか明日早朝、子牛が生まれるのかな?日中に出産させるために昼間絶食しているのだが、最近の出産は夜ばかりだなぁ。北海道にいたころは、8割以上は昼間の出産だったのだが・・・。夕方の給餌が早すぎるのかな?
 昨夕、牧場の水道タンクが空だったので、タイムスイッチでポンプを作動させて、満タンにしたはずだった。出勤するとき、垂れ込めた低い雲だなぁと思っていたら、丘の上は雲の中だった。真っ白で、タンクのインジケーターも見えない。牛舎の蛇口をひねったら、水は出なかった。
 また水が上がっていない。原因は、2時間のタイムスイッチを作動させているのだが、この電源がしばしば落ちてしまう。二段階でくみ上げているので、井戸から中継ポイントまでは汲み上がるので、中継ポイントのタンクから水があふれ出し、林道を伝って集落へ流れていく。俺も、電源が落ちるのを知っているので、スイッチを入れてからしばらくは見張っているのだが、5分も待つとじれったくなって仕事に戻ってしまうのだ。電源が落ちるのは、俺がポンプ小屋を離れてからだ。
 牛舎で仕事をしていると、集落に水が流れてきたと電話があり、見に行くと、10分ほど前にスイッチを入れたはずなのに、モーターは回っていなかった。タイマースイッチが心もとない手ごたえなので、連続運転に切り替えて、2時間後に見に来れば大丈夫だろうと思ったのだが、1/3ほど水をくみ上げたところで、やはり電源が落ちていた。基盤が腐食していて、ポンプの制御が出来ていないのだ。
 硫黄島の牧場は、100%水道水に頼っている。
 島の牧場で水を一番使うのは俺で、真っ先に断水するのも俺の牧場だ。哺乳ロボットを使っているので、長時間断水されると、故障の原因にもなるし、子牛の健康に重大なダメージを与える。哺乳ロボットを使っているから、ポリタンクなどで水をくみ上げることも難しい。牧場にとって、水道は生命線なのだ。
 島の水道にトラブルが起きた時、世話をしてくれる人がいる。その人は、水道に頼り切った牧場の危うさをよく理解しておられ、俺が来て一年間、古くなった水道施設の更新に尽力してくださった。いろいろトラブル続きの揚水ポンプだが、その人が役場に働きかけてくれたおかげで、基盤を新しく交換して、中継ポンプだけでも自動化することになったそうだ。ようやく、その方向に話が進んだことを、とても感謝している。
 井戸の状況や、揚水状況を知る手立てのない俺たちが、毎日機械的にスイッチをいじるより、水が減ったら揚水ポンプを作動し、元のタンクが渇水する前に安全装置でポンプを停止するほうが、空転やエアを噛むなどのトラブルが無くなる。いずれは、全自動運転になると思うが、島では亜硫酸ガスの影響で基盤や機械が壊れやすいので、知識や技術はある程度身に着けておかなければならない。
 今日のところは、ポンプ小屋と牧場を6往復したが、俺がセリの為に鹿児島に上がってしまってからこういうことが起こると、牧場の機能は完全にマヒしてしまう。何とかなるのかな?