ネットワークカメラの必要性

 夜中の12時半ごろ、携帯メールに『駆けつけ通報』が届いた。破水したということだ。布団に入っていたが、気合一発起き上がり、保護している娘さんを起こさないよう、静かに着替えて出かけた。当然、3匹の犬たちは着いてきた。
 牛舎に着き、明かりをつけたら、すでに前足が見えていた。長靴を履いて、助産の準備をして行ってみたら、もう生まれていた。すごい安産だ。
 結果的には、駆け付ける必要が無かったが、お産の直前まで安心して待っていられるのは、とても嬉しいことなんだ。牛温恵も監視カメラもなかった頃は、お産が近づくと数時間ごとに牛舎に通っていたこともある。お産が遅れると、本当に何日も眠れなかった。と言って、大丈夫だろうと寝てしまうと、難産だったりするから困るのだ。

 牛舎のネット接続状況を調べてもらったが、牛舎に来るケーブルのどこかに異常があるらしい。接続状況の点検はしたと聞いていたのだが、運営開始からたった20日で、障害が出てしまったのだろうか?

 海を見ると、3mと予報で言っていた通り、かなり荒れていたのだが、フェリーみしまは出港したそうだ。
 今回のような北西の風の場合、波は予報通り立つのだが、東風の場合は、屋久種子島が防波堤になり、三島海域はとても穏やかになる。波が無いのに何で船が出ないという話にならないために、何か所かネットワークカメラを取り付けられないかな?という話も聞いた。これは、密漁監視カメラと共用することができるから、とてもいいことではないかな?
 技術者の話では、三島村のインターネットは、すごく効率の悪い運用になっていて、光ケーブルの性能を使い切れていないらしい。『島民がインターネットすると言ってもどうせたいしたことないから、この程度でよかろう!』という考えのような気がするが、もしそうなら役場職員さんの想像力が足りなすぎる。
 俺がこの島に来るのを決めた理由の一つに、一年待ったら光ケーブルが引かれるというのがあった。牛舎と住居が離れているが、ネットワークカメラを使えば何とかなると思っていた。北海道にいたころは、牛舎を監視するカメラって、普通に着いていて、牧草作業中に携帯で牛の動画を見ることができていた。その頃の回線速度って、せいぜい2Mbpsだった。俺んちの光回線速度は、35〜50Mbpsもあったぞ。
 使えるものは、ちゃんと使って性能を発揮し、みんなの生活の質を向上させてこそ、立派な行政サービスだと思うんだけどね。

 船には獣医さんも乗っていて、ワクチン接種をしてくれた。それに合わせて、妊娠鑑定をしてもらいたい牛を捕まえるのだが、オレンジ22番は、藪の中に逃げてしまった。早くスタンチョンをを取り付けなきゃ!