久しぶりのカンパチ

 大きな流れが狂わないよう気をつけながら、子牛の健康管理に勤しんだ。
 登太郎の去勢手術をした。
 この手術は、子牛をちゃんと保定することが、手術が綺麗に出来るかどうかを別ける。今日は、保定が上手くいかなかった。
 赤19番を、灯台下放牧地に移動させた。強くて、他の牛を押しのけるのだ。
 見回りに行ったら、赤2番が発情していた。産後32日で、二回目の発情だ。

 港に綺麗な潮が入っていたので、出かけることにした。
 やっていないと、道具がダメねぇ〜!シュノーケルの排水口にあるパッキンが無くなっているのを忘れていた。息を吸うと、海水が口の中いっぱいに広がった。ゲホゲホッ!穴を左手で押さえながら息を吸う。
 ハッキリ言って、帰りたかった。これでは、素潜り漁にならない。マスクに水が入るのだが、マスククリアすると、シュノーケルに溜まった水を排水する息が足りない。左手を使えないので、右手の銛はゴムを引いた状態で持たなければならず、握力が急速に低下してしまう。
 ジタバタしている俺の周りを、ニザダイの群が取り囲んでいた。この魚が美味しければ、獲物に困らないんだけどね。大きくて肉が多い。だが、目視で選んで取れる突きン棒漁では、欲しい獲物しか手を出さないのだ。
 良型のギンガメアジが、俺を見に来たのだが、俺の右手は引きつっていて、狙うことが出来なかった。
 深みには45cmクラスのメジナが居たが、今日のコンディションは、狙える状態ではなかった。
 もう帰ろうと思っていたとき、前方からカンパチがやって来た。覚悟を決めて息を止め、両手で銛をかまえて待つ。カンパチは、セオリー通りに俺を観察しはじめた。チャンスは5秒だけだ。良く狙って・・・。
 直ぐにえらを取って血抜きし、カヤックに乗せた。55cmだった。

 牛舎の周りでは、赤9番、オレンジ16番、赤16番が、発情していた。