大捜査


 今朝は、脱走名人のトマトも、さすがに出てこられなかった。孤児あかねも、大人しく部屋で待っていた。
 不思議なことに、あかねには一日一回しかミルクを与えていないのに、あまり腹が減った様子も無い。普通なら、腹を空かせて親を呼ぶモノだが・・・。これは、配合飼料の利用率が、意外に高いと見ても良さそうだ。ストマックチューブは、俺しか使えないので、市場に行く日までに、離乳させなければならないのだ。彼女なら、何とかなりそうだ。
 8頭に、人工哺乳する。
 武蔵、小次郎、おりおん、竜之介は、飼料食い込みを加速するため、減乳を始めた。腹が減ると、エサの食い込みが増し、胃のルーメンの発達を加速できるのだ。
 連動スタンチョンに入らない赤の9番捕獲作戦を敢行した。
 大人しい牛だが、スタンチョンどころか、エサ場の柵の中にさえ入らないのだ。先日は、追い込もうとしたら走って逃げられた。今日は、二人掛かりでゆっくりプレッシャーをかけて、なんとか柵の中に追い込めた。赤の18番と違って、ロープをかけられた後は振り切って逃げようとしないので、助かる。お産が近い黄色の83番と一緒に連れ帰り、牛舎に入れた。
 ついでに、オレンジ43番の捜索に出かけた。すると、牛群から離れた竹藪の中に、黒い影が見えた。オレンジ43番だった。足下に子牛が居るかも知れない。刺激しないよう、声をかけながらゆっくり近づいたら、突然、俺の足下から黒いモノが飛びだした。大きな子牛だ。無事だったんだ!
 行方不明になってから、6日が経っている。人工哺乳に切り替えるなら、急がなければならない。道具を取りに帰り、捕獲作戦。母親は見つかるが、子牛は離れた場所に隠していた。とりあえず母を捕まえ、しばらく竹藪の中を牛に曳かれながら、子牛の所まで案内させた。始めは、見当違いの所に案内されたが、子牛の鳴き真似をしたら、ちゃんと子牛の所に連れて行ってくれた。母子共に連れ帰り、離乳小屋に一時的に入れた。