廃用牛出荷


 あかねは、脱走して親牛の群と一緒に放牧地に行っていた。毎日声をかけ触って育てたあかねは、とてものんびりした子牛で、人を恐れないから逃げ出しても簡単に捕まる。顔を見たら、あまり腹が減ってないと書いてあった。『???』これは、誰か他の母牛の乳を盗飲したのかも知れない。逞しいのだが、大切な子牛を、『飲んだのかも知れない。』で育てるわけにはいかない。
 超早期母子分離の4頭は、今朝はダブルハンドで2頭ずつ飲ませることが出来た。みんな、押しが強くて、大変である。
 長期不受胎で、他の牛を苛める青の21番を、廃用として出荷する日だった。他の作業をしていて、すっかり忘れていたのだが、直前になって思い出した。急いでトレーラーの準備をしたが、牽引するフォードはバッテリー上がりでエンジンがかからなかった(T_T)/~~~  ブースターケーブルが届く場所ではなかったので、猛烈に焦りながら延長コードを引っ張って、充電器を繋いだ。青の21番を引っ張ってきて、トレーラーに乗せ、他の作業をしながら充電されるのを待った。
 登録のため、受精卵移植で生まれた元十郎の、鼻紋と毛根細胞を取った。 
 船の時間ぎりぎりだ。トラクターの所に行ったら、充電器の電源が落ちていた。コンセントをいじっても、電源ランプが着かない!あとで解ったことだが、働いている人が、気を効かせてコンセントの元を抜いてくれたのだった。
 エンジンがかからなかったら、出荷は諦めなければならない。慎重にセルを回した。幸いエンジンは始動し、港に連れて行くことが出来た。
 港では、ユンボを借りる手配をつけることが出来た。
 ユンボが来るまで、見回りをして、長期不受胎牛にビタミンを飲ませたり、採草地脇の破れた柵を応急修理して回ったり・・・
 ユンボがあれば、深い穴を掘るのも簡単である。娘を残して死んでしまった母牛を埋葬するため、深くて大きな穴を掘った。
 今日のユンボはヤンマーで、以前使っていた日立のユンボと、レバー操作が同じだったので、とても使いやすかった。
 さて、あかねに乳を分けたのは誰だろう?超早期母子分離で、乳が張っている牛かも知れない。上手く乳母を捜せれば、ストマックチューブでミルクを飲ませるより、遥かに楽で安全である。モモカと赤の19番を、あかねと同室にしてみたが、近づけなかったようだ。苫斗太郎の母親が、あかねと一緒にいたのを目撃しているが、子牛が居る母牛には着けるわけにいかない。結局、ストマックチューブを使った。

 最近、全然ゆとりがないなぁ。毎日、ヘトヘトだ。こういう時は、黒毛和牛のすきしゃぶを食べるに限る。