別れ

 夜中、冷たい雨が降っていた。
 牛舎に着いたら、霰になった。
 身体にかかった毛布は、それなりに保温の役に立っていたが、ナカボクの顔から生気が無くなっていた。ストマックチューブで、暖かい獣医散を溶かした湯を飲ませたが、舌が力なく垂れていた。点滴を暖め、他の薬剤も用意したが、もはや治療のために苦しめるべきでないと判断した。
 エサも水も欲しがることなく、数時間後、静かに息を引き取った。
 乳量が豊富なので、北海道にいた頃は、制限哺乳で大きな子牛を育てる、良い母親だった。まだまだ現役で頑張ってもらうつもりだったのだが・・・。
 長い間、ご苦労様。助けてやれなくて、ゴメン。