帰島


 島に帰る日だ。車検が終わったユニックは、8時半船に積み込みなので、その前に行って、獣医さんの軽トラから、これまでに購入した物を移し替えなければならない。足をいたわりながら、ゆっくり歩いた。
 獣医さんもすぐに来てくださり、荷物をユニックの荷台に乗せ、船倉に・・・。
 時間が余ったので、いつものようにミスタードーナツを買いに行った。これまでは歩いていったのだが、今日はタクシーを使った。約一万円分のドーナツを買い込んだ。
 船が出るとまもなく、牧場から電話があった。飛行場の鍵がかかっており、管理人は不在だから、黒島崎放牧地の見回りは出来ないと・・・。
 最近、飛行場の柵を新しくして、鍵を閉めることにしたらしい。黒島崎放牧地には、滑走路を横断しないと行く手段がないのに、俺に鍵を渡せないらしい。管理人が常駐しているのだから、開けてもらえば良いはずだと、担当の役場職員は言っていた。飛行場は村の敷地だから、勝手に横断しては困ると言うが、そこを通らないと放牧地に行けない現状を知っているなら、先に道を着けてから言う台詞だと思うが・・・。
 役人は、権力を振りかざして威張るのではなく、住民が働きやすい環境を守ることに細心すべきだろう。村の職員の人には、村人のために一生懸命な人が多いのに・・・
 働いてくれている人に、集落まで降りて、硫黄島支所長から鍵を借りて、放牧地の観察に行ってくれないかと頼んだが、下まで降りて支所長を捜して借りるなんて、そんなゆとりは無いと断られた。
 北西の風が強く、錦江湾を出ると船は大きく揺れはじめた。歩いていると、よろめく程だ。さっさと眠る。硫黄島の陰に入ったら、揺れが収まったので弁当を食べることが出来た。
 上陸し、早速牧場に行ったら、ちょうど黄色50番が出産するところだった。人工哺乳の子牛が3頭居て、ムサシと小次郎の双子は、犬のゴロウより小さかった。
 二時破水したのに、お産が進まないので、足を引っ張ってやった。足首は細いのに頭の大きな雌で、素手で引っ張るには苦労した。黄色50番は、エサを振り掛けてやっても、熱心に舐めるどころか、子牛に頭突きを始めた。一旦外に出して、体を擦って乾かしてやる。
 人口初乳を借りに行って、お湯を沸かそうと思ったが、水は出なかった。中継地点にある調子の良い方の2号ポンプまで、壊れてしまったらしい。麓のコントロールパネルは、一ヶ月前からカチャカチャと異常を示す音がし続けている。何時水が出なくなってもおかしくない。ペットボトルなどにくみ置きしておいた水で、ミルクを作る。