削蹄 二号ポンプ

 水が出ないのは、困ったモノだ。俺が牛舎に行く一時間前からポンプを動かしているらしいが、全然出る気配がない。あそこの一号ポンプは、調子悪いはずなのだが・・・。
 離乳小屋の一頭が、下痢をしていた。ハナタレの子牛も居る。群飼いの場合、一斉治療が効果的だ。8頭全員に、注射と飲み薬を・・・。暴れる子牛をロープで捕まえ、一頭一頭丁寧に薬を飲ませ、注射をするのだ。八頭もいると、治療済かどうか解らなくなるので、全員捕まえてから治療を開始する。ここの子牛たちは、俺に親しみを持ってくれる子牛が多かったのだが、この治療で人間不信に陥ったであろう。

 今日は、削蹄をしなければならない日だった。
 子牛を、一頭ずつ捕まえる。部屋から出すのも、意外に手こずる。出した後、枠場のあるコンクリートの上に乗せるのに、また抵抗する。更に、枠の中に入れるとき、最大級の抵抗をする子牛が多い。
 枠場に入れたら、前足を一本ずつロープをかけて引っ張り上げ、縛る。前足を縛れると、その足に体重をかけてきたり、パニックになってひっくり返ってしまったり・・・。意外に手間をかけさせられる。中には、カバのように排便しながら尻尾を振り回して、撒きグソするのもいる。軟便でこれをやられると、ブルーになるのだ。
 5頭全部削蹄するつもりだったが、午後からも水が出なかったので、俺の当番ではないが、仕事を中断してポンプ小屋に走る。崖下の中継地にある一号ポンプは、タイマーで動くけど調子が悪く、4時間かけてもタンクを満タンに出来ない。だから、俺は手動操作の二号ポンプに切り替えて、作動させてみた。確認しに行ったが、上のタンクにドバドバ揚水している音がしていた。
 帰り際に見たら、2時間でタンクは満タンになった。手動なので、ポンプのスイッチを止めに行った。