16人の視察団

 牛舎に行くと、しげみが子牛を生んでいた。小さいけど元気な子だ。名前は『あかね』になった。既に乳を吸っていて、ピョコピョコ走り回っていた。しばしば、母親を間違える。しげみは、胎盤を食べてたぶん匂い消しをしていた。
 魚が欲しかったので、昼飯前にカヌーを漕ぎ出した。だが、いざ突きン棒をしようと銛を用意し、銛先の曲がりを修正していたら・・・ポキッ・・・ネジが折れた(T_T)/~~~  銛先が無ければ、突いても魚を傷つけるだけで、獲物は捕れない。スゴスゴ帰った。

 大隅半島の市町村から、畜産担当の方が視察に来られた。総勢16人。事前に何の打ち合わせもなかったのだが、とりあえず聴かれるままに、現状、問題点、努力している点、改善目標などを話した。
 靴にビニールのカバーを掛けて歩く音が、子牛を驚かせ、二頭が棒の隙間から飛びだしてしまった。捕まえるのは簡単だが、元の部屋に戻すのは苦労した。引っ張っても動かないし、後ろから追う形になるよう体を買えようとしても、更に行きたい方向から後退したり・・・。
 視察団が帰った後、俺はロールを集めに行った。荷台に乗ったり降りたりするのは、トラクター作業に慣れた俺には、焦れったかった。

 日が暮れるのが早く、牛舎作業が終わる頃には、真っ暗になっていた。電気が着かないので、暗くなるとだんだん手抜きになってしまう。

夜は、視察団の人がバーベキューをしていて、俺も呼ばれていた。俺が行ったときには、既にみんな出来上がっていた。焼いたお肉は、せんべいのようになっていて・・・。新たに焼いてくれた。焼いてもらいながら、こういう事を言うのは失礼だと、重々承知している。だが、畜産家としてみんなに美味しく食べてもらうためには、言う必要があると思うので、敢えて言う。
 焼き肉は、十分な火力で短時間で焼き、ひっくり返すのは一度だけ!弱い火力だと、肉汁が浮き出て旨味が逃げてしまう。更に何度もひっくり返すと、肉汁がしぼり出されて、旨味のない堅い肉になってしまうのだ。
 俺が焼いた肉を食べてもらったら、
「あれ?これ別の肉?柔らかくて、全然味が違う!」
と言ってもらえた。肉は、火の通し方で、味が決定的に決まってしまうのだ。インスタントラーメンを作るとき、とろ火でダラダラと茹でたら、どうなってしまうかみんなすぐに想像できるでしょう?弱火で焼き肉をするって事は、それと同じなんですよ!一杯100円のラーメンをちゃんと作るのに、一切れ100円もする焼き肉を無頓着に作るのは、おかしいですよね。美味しい肉は、美味しく食べてもらいたいです。