ちょっと冒険


 夜中に診に行ったとき、山は激しい風雨だった。集落とは違うのだ。風向きが良く、雨は降り込んでいなかったが、風よけの板を立てかけた。耳を触ったら、体温が上がっている様子だった。暖かいポカリを飲ませた。
 未明に行ったときも、雨は降っていたが、元十郎は立っていた。

 離乳した子牛たちは、ちょっとだけ落ち着いてきた。エサの時間になると、我先にエサ箱に殺到する。ただ、小屋がちょっと離れているので、カラスに狙われるのが困っている。パチンコを持って近づくと、蜘蛛の子を散らす様に居なくなるが・・・。

 学校の先生を誘って、カヌーを漕ぎ出した。パドルは二本しかないので、二人が漕ぎ、一人がトローリングをする。残念なことに、今日の港は赤く濁っていた。恋人岬まで行ってみることになった。先端部は、大きなうねりがあり、岩に当たって返す波もあるので、岸には近づく気にはなれなかった。だが、カヤックは予想以上に安定しており、もうちょっと先まで行くことになった。
 海面に岩が顔を出していると思ったら、それは大きなウミガメだった。頭も、異常にでかい!
 岬の裏側には、おそらく枕崎あたりから来たと思われる瀬渡し船が来ていて、釣り客が沢山来ていた。地元に一銭のお金も落とさない人が、島の資源をさらっていくのは、理不尽な気がした。