ハルカ出産

 茂三郎は、俺が居ないと、好き勝手にしているらしい。飼槽に入れた牧草の上に眠り、えさ運搬用風呂桶から直接えさを食べる。
 瀬棚から連れて来たハルカ(百合茂←北国7の8←安平)が、産気づいた。初産なので、とても心配だが、働いてくれている人に頼るしかない。メールや電話で様子を聞きながら、随時指示した。
 足砲が出てきているから、一時破水はしているようだ。そして、そこから進まず、ハルカが苦しんでいるそうだ。頭も正常な位置に来ていたので、足を引っ張って出してもらった。

 生まれたのは、普通サイズのメスだった。名前は『ことぶき』(安福久)。メスが生まれてほしいと願っていたので、とても嬉しい。後継牛として、大切に育てるつもりだ。
 ハルカは、ぐったりして子牛を舐めるゆとりも無いそうだ。子牛に餌を振り掛けて、無理にでも舐めさせる。やがて、母性に目覚めたハルカは、熱心に舐め始めた。やがて子牛は立ち上がり、乳を飲み始めた。初産のハルカは、十分な初乳が出ないことが予想された。これから寒くなる時期、免疫をつけるために初乳は十分な量が必要だ。母乳からでは心もとないので、人工初乳を飲ませてもらった。案の定、母親の乳首に吸い付いた後なのに、哺乳瓶の人工初乳を飲み干した。