市場初日

 市場に向かうバスは、7時出発だった。ローソンでサンドイッチと牛乳を買い、役場前に向かう。先輩方のアドバイスで、飲み物も1リットルほど用意した。
 子牛を所定の位置に繋いでから、ブラッシングをした。出発の前日、手を怪我して途中でクリーニングを止めてしまったから、おしりに運塊がこびりついていた。これは、石けん水でぬらしてしばらくしてからブラッシングしないと、毛も一緒に抜け落ちてしまうのだが、ここでは用意できない。タオルを水で濡らし、それでこすって少し湿らせてから、優しくブラッシングした。でもちょっと毛が抜けたかな?汗びっしょりになって、着替えをあまり持って来なかったことを、後悔した。いろいろ準備不足だった。

 市場が始まった。
 驚いたのは、テンポがとてもゆっくりしていることだ。
 北海道の読者に向けて書くと、
 出場順番が、組合ごとのまとまりになっておらず、バラバラになっていた。畜主が、自分の牛を引くためらしい。上場頭数の半分より前と後で、くじ引きしてどちらが先に始めるか決めていた。電光掲示板の数字の上がる速度が、半分くらい。体重を言った後に、与えていた餌の種類も言う。アナウンスもゆっくりなので、俺でも記録を取るのが楽だった。そして、昼休みもある!
 どっちが良いとかではなく、単純に驚いた。
 相場は、残念ながらとても安かった。キロ千円行かない牛が、とても多かった。40万円を超えた牛は、数えるほどしかおらず、さみしかった。
 俺の牛も、当然安かった。土龍波の雄が、結構頑張ってくれたが・・・。