去勢手術

 今日は、去勢手術がメインの作業だった。朝の涼しい時間に、俺は見回りを済ませてしまった。手術する部屋は、助っ人様が掃除してくれた。
 手術する子牛をつなぎ、ブラッシングしてお尻の周りを綺麗にする。陰嚢をヨードチンキで洗う。洗った手をヨードチンキで消毒し、陰嚢を引っ張って先端から2cmあたりを、メスで一気に・・・
 要するに、何度も手を洗い、消毒する。北海道でのやり方では、化膿する危険性があるのだ。三頭手術したが、今日もとても綺麗に仕上がった。
 昼飯前に、雑草粉砕ロールをラップした。収容場所がないので、牛舎脇に置くつもりだ。

 新しいポイントに潜りに行った。透明度は、表層に霞がかかっているが、1m潜れば澄み切っている。メジナが多いが、サイズは小さい。深場に行くと、ハマフエフキが射程外を悠々と泳いでいる。35cmくらいのイシガキダイが、沢山棲んでいた。岩の穴を捜せば、大物が居るはずだ。狙われることのないアオブダイは、何時も俺の前をうろついて邪魔だ。回遊魚が来ることを期待したが、今日は居なかった。35cm程のアカハタもいた。アカハタとしては良いサイズだが、俺の銛の獲物としては、ちょっと小さい。
 長い上に強力なゴムが着いている俺の銛は、鋼鉄製の鮫用銛先が着いている。岩に当たっても銛先は壊れないが、ゴムが強力すぎて下手するとシャフトが曲がる。だから、穴突きはしたくない。
 水中に潜って待ったら、岩陰から35cmのメジナが顔を出して身を翻したので、出来心で仕留めてしまった。
 長い距離を泳いでいたら、バラハタの大物が居て、追ったら岩の穴にもぐり込んだ。穴を突きたくないという心理と、ゴムが強すぎて長時間持っていられないという条件が重なったところで、岩穴を覗き込んだ俺の懐に、バラハタが飛び込んできた。撃てなかったし、接近されてはもう撃てない。また逃がしちゃった。
 浮上した俺の下を、アジアコショウダイが悠々と泳いでいた。いただきます。
 十分すぎる収穫があったので、さっさと帰る。
 突然の雷雨となり、水面が白くなった。窓を開けっ放しだった家では、ベッドが濡れていた。

 夜牛舎作業を終わらせて、坂の上から港を見たら、久しぶりに清水がテトラポットや堤防の所まで来ていた。早速行ってみると、魚が湧いている。だが、誰の竿にもヒットしない。
「アンタちょっと潜って、どんな魚が居るのか見てきなさいよ!」
 入りたい気持を抑え、ニコニコ笑うしかない。突きン棒は、魚に食い気が無くても、射程内に入れれば突けるのだ。俺としては、あの沖テトラに15分ほど居させてもらえれば、十分すぎる獲物が捕れるんだが・・・。
 堤防に、縄ばしごをかけるか?