牛引き

 今日は、二人の若者を頼んで、一人では出来ない仕事を一気に片付ける算段だった。

 まずは、灯台下で生まれ、これまで何度も捕獲に失敗している『らん』とその母親を収容することだ。
 らんはとても走るのが速く、俺の車を見かけると、負けじと走る。起伏や障害をモノともしない痛快な走りッぷり惚れて、らんという名にしたのだ。
 今日は、何が何でも追い込み柵の中に入れる作戦だった。呼びに行ったが、牛の姿は見えなかった。呼ぶことしばし、使われていない連動スタンチョン跡地の方から、牛群が駈けてきた。らんも一緒だ。
 ちょっと難航したが、らんとその母親を追い込み柵の中に入れ、ロープで確保した。トレーラーを持ってきて、母親が歩くのに合わせて、子牛も追ってもらった。3人居ると、仕事も安全確実に出来るなぁ。無事、小屋下放牧地に入れることが出来た。

 離乳時期になった子牛とその母牛をリストアップして、読み上げてもらった。たまたま、子牛が二頭と母牛が二頭捕まった。さつきの母親もロープをかけたのだが、振り切って逃げてしまった。ここも、壊れたゲートを修理しないとダメだ。子牛と母牛の組み合わせは合っていないが、子牛は電柱牛舎に、母牛は黒島崎放牧地に移動させた。

 離乳小屋で大きくなりすぎた6頭の子牛を、大牛舎に引っ越しさせた。これが大仕事なんだぁ。150kgを越えた子牛と、まともに綱引きをしても、勝てない。子牛の中には、ちょっと引っ張って緩めることを繰り返すと、歩いて着いてくる子もいる。後ろからプレッシャーをかけると、簡単に動く子牛もいる。
 でも、何をやっても動かない牛も居るんだ。男二人掛かりでも、足を突っ張って動かない時は、トラクターで引っ張るしかない。どうせ引っ張るなら、引かれたら着いていった方が楽だと学習させた方が良い。瀬棚では、出荷前の子牛で、引いても動かない牛は、そうやって調教していた。
ちょっと引いて止まり、しばらく考えさせてから、またちょっと引いて止まる。ほとんどの牛は、それで覚えてくれた。ほとんど・・・(^^;;;
 学習できるかどうかの分かれ目は、それまでどれだけ触って育てたかによると思う。沢山触った牛は、引かれることにも抵抗をしない。
 今回引っ張った6頭の子牛で、トラクターが必要だったのは1頭だった。そして、その1頭は、トラクターで引っ張っても、抵抗を止めなかった。学習障害のある子牛も、ときどき居る。乗用馬ではないので、覚えない場合は、諦めればいいのだ。
 子牛の中には、ものすごく頭の良い子が居る。状況判断力が鋭く感情表現が豊かで、飼っていて可愛くて仕方ないのだが、肥育屋さんに売るときは全く考慮されない(T_T)/~~~ 役牛の時代に生まれたら、凄く重宝しただろうに・・・。