ゴンタの死


 牛舎に行ったら、農業用猫隊長のゴンタが、息を引き取っていた。享年8歳。
 俺が入植する前から、北海道の農場に住んでいたドラの息子で、早世したドラに代わり、俺がミルクやエサをやって育てた。
 当時もお金が無く、釣ってきた鮭やホッケ、ヒラメを食べて育った。猫じゃらしを使って、ハンティングの特訓をし、生後3ヶ月でネズミを捕ってきた。その後も、ネズミだらけだった牛舎から、ネズミの姿を完全に見えなくした。
 硫黄島に来ても、同じような活躍を期待したのだが、こんな事になってしまい申し訳ない。長い間、ご苦労様。
 1ヶ月ほど前から、先月亡くなったイイコと同じ症状で、エサを食べなくなり、足腰が弱くなり、激痩せ、目から膿のような目やにを出すように・・・。俺は、老衰と思っていたが、元気だったゴンタも同じような症状で、急激に衰えていったところを見ると、なんらかの病気と考えた方が良さそうだ。
 ここの農場には、多くのネズミが生息していて、ときどきゴロウやカイトが捕まえてくれるが、とても追いついていない。誰か、強力な農業用猫を雇わなければならない。生まれて間もない猫は居ませんか?

 今日も、午前中に時間を取って、恋人岬までトレッキングに行った。ポパイの筋力アップと、ソックス共々いろいろな状況に慣れてもらうためだ。今日は、ジャンベ留学生の人たちが道路整備の作業をしていたので、車や刈り払い機の音がしても、落ち着いて行動するという課題をクリアしてもらう。
 ポパイは俺が乗っているから、少々のことがあっても大丈夫だが、ソックスは紐すら着いていない。でも、大好きなポパイと散歩することは、彼女にとってはとても嬉しいことのようだ。人に会っても、刈り払い機の側を通っても、驚いたり悪さをしたりすることなく、楽しくトレッキングが出来た。

 昨夕、堤防で釣りをしている女性と話しをしていたら、メアジが入れ食いで、20匹ほど釣れていた。島の釣り状況をいろいろ伺って、とても楽しい一時だった。帰りに、2匹のメアジを頂いた。
 まだ、死後硬直をしていないメアジを、刺身にしてみた。歯ごたえは、とてもしっかりしている。と言うか、パキパキと音がするほど堅い。味は、とても薄い。だが、熟成させれば、美味しい刺身になると思った。
 熟成って、ちょっと抵抗ある人もいると思う。
 カナダで川下りをしていたとき、インディアンと巨大なヘラジカを捕って、俺は10kgほどの肉を貰ったことがある。解体した夕方、早速ステーキにして食べたが、堅くて噛み切れない。しかも、タンパク質が分解していないので、旨味が全く無い。とても食えないので、鍋に入れて1時間ほど煮込み、ようやく食べたという経験がある。その肉は、4日を過ぎたあたりから旨味が出始め、1週間を過ぎる頃には、絶品のステーキになった。
 新鮮な肉は、美味くないのだ。普通にスーパーで売っている牛肉は、大きな固まりで10日ほど熟成(タンパク質を旨味のあるアミノ酸に分解すること)してから、、スライスしてある。スライスしてからは、早く食べた方が美味しい。松阪牛などは、固まりで1ヶ月ほども熟成させている。
 魚は、種類によって熟成させた方が美味しい物と、すぐに食べた方が良いものがある。足の速いイワシやサバは、すぐに食べた方が美味しいと思うが、カンパチ、イシダイなどは、1〜2日(本マグロは1週間と聞いたこともある)は熟成させた方が、堅さが取れるだけでなく、新鮮すぎる故の臭み(クセ?)が取れて、落ち着いた美味しさが味わえる。
 と言うことで、今日もメアジを一匹頂いたので、明日まで熟成して、味の違いを検証したい。