延命

 相変わらず、よく降る。
 明日は荒天が予想されるため、今日の村営船は『片道日帰り航行』になった。明日の船で、屠場に運ばれるはずだった肥育牛の3頭は、今日の船に乗せてしまうと、鹿児島到着が夜遅くなってしまい屠場に間に合わないため、延期になってしまった。
 俺は、預かっているだけだが、この肥育牛の延命は、いろいろ複雑な感情や都合が交錯していた。
 空くはずだった部屋には、出産予定のために放牧地から連れ帰る牛が入るはずだった。行き場が無くて、伸ばし伸ばしにしてきたのだが、とうとう放牧地で一頭産まれていた。母親は白の21番で、生まれた牝子牛は7月3日だから『ななみ』。明日には、もう一頭くらい産まれてしまうかもしれない。
 離乳も遅れている。明日も雨らしいが、哺乳中の親子を、放牧に出すしか無かろう。

 毎日、ずぶ濡れの服を着ている。雨の場合もあるが、たいてい汗だ。分厚い作業服を着るから、暑いんだという意見もあるが、俺にとっては体を守るプロテクターでもあるのだ。汗くらい、我慢しよう。

 新しい携帯が届いた。いろいろ機能があるらしいが、ハッキリ行って使い切れない。

 昨日の発情牛に絡んでいた赤の11番が、今日は盛大に発情していた。『勝安竜』を着けた。