溜まっている案件を、一つずつ片付けていかないと、気持にゆとりは生まれない。
 朝牛舎の後、共同機械小屋のシャッターに、油を差した。凄く立派なシャッターなのだが、亜硫酸の雨はこれを錆び付かせるのだ。
 壁によじ登り、可動部分すべてに機械油をたっぷり差す。ついでなので、4つあるシャッターすべてに油を差してから、動かなかったシャッターの所に行って、力を入れる。ちょっと動いたと思ったら、一気に開いた。動くはずの物は、ちゃんと動く方が気持ちが良い。
 中に仕舞ってあった巨大な土砂バケットを、ファーガソン4255に取り付け、黒島崎の連動スタンチョンに行く。
 土砂バケットで土をすくい、連動スタンチョン前に土を置いて、押し固めるのだ。始めは、すぐ近くの土を取っていたが、大きな岩が多いので中断。
 牛達が土を食べている所に、良質の粘土があった。この土は使いやすかった。牛の分は、あと数百年分は残っているから、心配しないで!
 土を入れて足下を高くしたスタンチョンは、牛達も頭を入れやすくなったと喜んでいた。あと数日で、バイチコールの一斉塗布が出来るだろう。
 大浦の方も、ちょっと土を入れた方が良さそうなのだが・・・。

 飯を食って牛舎に帰ると、ちょうど赤の7番が、出産中だった。助産すると、牛との関係を作りやすいのだが、もはや俺の手は必要なかった。
 この牛は、張りを見るため乳房に触ろうとすると、すかさず回し蹴りをした。ずっと世話をしてきた奥さんでも触れないそうだ。子牛が生まれ、ヘソの緒を消毒したり、体重を量ったりしなければならないが、近づくと襲ってきてとても危険だ。
 子牛は大きく、立ち上がることが出来ないが、自分の足を吸っていて乳を飲みたそうだった。だが初乳を与えるためには、母親を繋がないとならない。途中、母牛が子牛を舐めるのも止めてしまったので、粉状のエサを子牛に振り掛け、舐めさせた。
 子牛は牝。名前は、『あやめ』にした。
 自力で母乳を吸うまでに、3時間もかかってしまった。ちゃんと、教育する必要がある。

 明日から、中央大学法学部4年の学生さん(♂)二名が、牧場を手伝いに来てくれる。
 事前に、
1 島に来る2週間前から、牛や豚、山羊、羊のいる施設には、近づかない。
2 同じく2週間前から、酪農畜産関係者には近づかない。
3 島に来るときに着ていた服と靴は、すぐに洗濯して、牧場には新しい服を着てくること。
という、厳しい条件を出してあった。畜産に縁のない東京の学生さんが、これだけの条件を守ってくれたら、まず大丈夫だ。
 いろいろ、手伝ってもらったり、楽しいことにも挑戦できるかもしれない。