福栄

 晴れてはいるが、昨日と打って変わって、強風が吹き荒れていた。シーカヤックの人は、昨日のうちに島一週ツーリングが出来て、良かった。俺と違って、日頃の行いが良いのだろう。
 出産予定の二頭は、まだ生まれていなかった。
 恐れ多くも、『福栄』という名の子牛がいた。もう離乳しても良いほど、配合飼料を食べ、母牛といる時間はとても少ないのだが、何となく離乳しないでいる。理由は、とても人懐っこく、俺を見かけるとエサをもらいに来るからだ。まだ、俺に心を許していない子牛たちも、福栄の行動に吊られて、餌をあさりに出るようになった。他の子牛の指導者として、重要な働きをしていたのだ。その成果が充分出てきたので、明日あたりにでも、部屋に入れようと思う。
 ちなみに種雄牛『福栄』は、もも抜けが良く好成績を残した牛で、俺が営農を始めた頃は、なかなか精液が手に入らなかった名牛だ。

 子牛は、狭い隙間に頭を入れたがる生き物だ。
 ここの牛も、例外ではないらしい。隣の部屋と仕切ってあった木の板に、子牛が頭を突っ込んで、動けなくなっていた。くさび形の頭だから、入れるときは楽に入っても、出るのは大変なのだ。丁寧に外してやったのに、子牛は怒って逃げていった。危険な柵は、取り外して外に出した。
 黒島崎にも、連動スタンチョンの欠損部品を取り付けた。
 大浦では、4番目の穴に取り付けたのだが、ちょっと幅が広く、頭を入れただけではロックされない事が多かった。黒島崎では、3番目の穴に取り付けてみたら、頭を入れただけでロックするのだが、慣れない牛は頭を入れなかった。仕方なく、4番目の穴に着けなおした。
 ここのスタンチョンは、グラグラしており、いつか抜けてしまうかもしれない。また、足下がえぐれており、牛が頭を出すのに苦労していた。土を入れるか、コンクリートを流し込む必要がある。
 子牛の成長にはバラツキがあり、写真のように後から産まれた子牛の方が、大きくなることも少なくない。経営的には、このような成長の遅れたコジケ牛を作らないようにしなければならない。そのためには、丈夫な胃袋を作る初期配合飼料を、出来るだけ早く食べさせる工夫が必要だ。