海♡

 引っ越しの荷物を荷解きしておらず、部屋の中は混沌としている。そのせいか?スペアカメラの充電器が行方不明となって、写真が撮れない状態が続いている。メインカメラは、メーカーに修理のために送ったまま、何の返答もない。本当に、直るのかな?

 ここ数日は、朝の散歩を控えている。おかげで、俺の食卓から魚が消えてしまうのだ。
 家から牛舎に向かう坂道の途中、この島唯一の港と集落を、見下ろせる場所がある。そこに車を停車させ、温泉水で赤く染まった海を見るのが、日課になっている。日によって、温泉水の広がりが変化しており、港に澄んだ水が流れ込んだときは、カツオなどの回遊魚が堤防で釣れたりするらしい。温泉で赤く濁るのは、世界的にも珍しい現象らしいが、ダイバーにとっては澄んだ水が好ましい。
 牛舎に着いたら、シゲヨ(平茂勝)がうろついていた。どこも荒らされていなかったのだが、様子を見に行ってビックリ!エサ箱前に設置された単管の柵が、支柱ごと引っこ抜かれていた。エサ箱前は、牛に踏まれてえぐれており、支柱の刺さりが浅くなったらしい。
 脱走意欲があるのはシゲヨくらいで、他の牛が出ようとすると、ソックスが追い返してくれた。彼女なりに、俺の役に立ちたいと思っているかのようだ。ポパイもさりげなく加勢する。
 倒れた柵を立て、余所から土を運んで、エサ箱前の窪みを埋めた。本当は、採石混じりの土砂で固めたかったが、贅沢は言っていられない。一生懸命踏み固めたが、あまり締まらない土だった。
 倒れた柵を、地面に突き刺す作業。単管で連結した4本の支柱は、互いが邪魔しあって、なかなか刺さらなかった。横着しないで、1本ずつ刺すべきだったが、結果的には刺さったので良いのだ。

 あまりに暑かったので、大浦に泳ぎに行った。ゴロウとカイトは、牛舎で留守番のはずだった。だが、車が向かった先がどこだか知っている彼らは、走って追いかけてきたようだ。
 ここの湾は、水が澄んでいて青かった。犬達は、俺より先に階段を降り、海に飛び込んでいた。ウエットスーツを着るか悩んだが、海パン一丁で入った。温い!
 泳ぐと、カイトが寄り添って泳ぐ。あまり泳ぎが好きではないカイトだが、俺を一人には出来ないらしい。ときどき、潜って岩の下を覗くのだが、水面から見えなくなると、ちょっと焦っているのが判った。浮上してきた俺に、急いで泳いできて、不安そうな声を出したので、背中に乗せて泳いでやった。岸まで送り届け、岩の上に登らせてやった。
 海の中は、綺麗で・・・綺麗すぎて・・・魚はほとんど居なかった。
 岩の下には、ミノカサゴが2匹。小さな珊瑚の周りには、空スズメダイの群。アオブダイやアカブダイが、我が物顔で泳いでいた。ちょっと大きめの海亀が、俺を見て逃げていった。
 プランクトンが発生しやすい春なのに、透明度が高かった。真っ昼間だと言うこともあり、美味しそうな魚は居なかった。魚を捕れるポイントは、船で行くらしい。その季節になったら、声をかけてもらうことになっている。
 さっさと帰ると、カイトが迎えに来てくれた。どうでもいいけど、君を背中に乗せる時、爪で背中を引っ掻くから、ちょっと痛いんだよ!

 糞出しである。スコップで外に押し出せば、ボブキャット(ミニホイルローダー)で回収できる。敷きワラを交換してやると、ここの子牛も、喜びのダンスをする。
 今日の種付けは、赤の2番と、赤の17番。『金幸福』と『華春福』を着けた。

 従兄弟が作ったという野菜が送られてきた。晩飯は、野菜づくしだ。