負傷

 毎日のルーティンワークの他に、子牛の風邪の治療、子連れ牛を小屋下放牧地に引っ越しさせる、北海道からの牛を広い放牧地に移動、お産間近の牛を連れ帰る、子牛に耳票を着ける・・・等に取り組んでいる。

 風邪の治療法として、全部の子牛を一斉に注射してしまう方法もある。一頭一頭を捕まえて、熱を計る手間が省ける。それに、同じ場所に居る子牛は、順繰り順繰り風邪をひくので、一斉にやった方が長引かない。
 それをしないで具合の悪そうな子牛だけを治療しているのは、全部を捕まえるだけのモクシ(オモテ)が無いのだ。でも、結局ほとんどの子牛に注射することになりそう。

 近所の牛飼いさんが、大型注射器を借りに来た。やはり41度の熱が出て、グッタリしている子牛が居るので、リンゲルで補液するらしい。症状的には、熱射病のようだった。牛用のポカリスエットがあれば、有効なのだが・・・。


 運搬用トレーラーを引っ張ってきて、アヤ(安福165の9)とカズエ(第一花国)を乗せ、灯台下に行くことにした。二頭とも人懐っこいので、自分から寄ってきて、モクシをつかませた。
 人懐っこい牛だからといって、油断すると痛い目に会う。北海道組のリーダーであるモモカ(北国7の8)は、仲間が行くのなら当然私も・・・っと思ったのか、俺に体をすり寄せてきて、左足の小指をガッツリ踏んでくれた(T_T)/~~~  シャレにならないほど痛いんだ。踏んだ本人は、ちょっと気まずそうな顔をしていた。
 灯台下に二頭を下ろしたら、早速手荒な歓迎が行われた。気の強い(血統が良いので気位が高い)カズエは、押し返して善戦していたが、多勢に無勢である。すぐに逆転するだろう。
 親子関係を確認できた一組の母子を、小屋下に引っ越しさせ、耳票を着けた。
 さらに、ヤスヒメ(安平)とヒカリ(安平)を、灯台下に引っ越しさせた。この二頭は、安平なのにとても素直で、要領がいい。さりげなく、手荒な歓迎を受け流していた。

 黒島崎には、タフなモモカとナカボク(平茂勝)を移動させることにした。モモカは、強かった。やられているナカボクとは対称的に、仕掛けてくる牛がほとんど居なかった。強そうに見えるのかな?
 ここにも、一組の母子が居たので、早速トレーラーに積み込んだ。
 もう一頭、明日が出産予定日の牛が居たので、ロープを首にかけた。ところが、鼻輪をつかんだ瞬間、大きく頭を振って逃げようとした。強くつかんだままにしておけば良いのだが、鼻輪を強く握ると破損したり鼻が切れたりするので、ちょっと手加減して手を離してしまった。ロープを持って押さえようとしたが、小指が痛くて踏ん張れない。走って逃げる牛の引き綱を握ったままにしておくのは、とても危険だ。何か巻き付ける杭か木があればいいのだが、笹だけなのだ。笹藪に出来た牛用のトンネルを追跡する。ときどきロープをつかんで引っ張るが、本気で逃げようとする牛は、真後ろから引っ張っても留まらない。
 さんざん逃げられた後、岩にロープを絡めて牛を止め、やっと鼻環に手が届きそうになった瞬間、けっこうな段差の上から突き落とされてしまった。不自然な態勢で落ちたので、足が十分なサスペンションとして働かず、思いっきりかかとを痛めてしまった。痛かった。
 明日は、仕事になるだろうか?