別れ

 たぶんそうなるだろうと思っていた。
 いつものように出勤し、小屋を覗いたら、乾し草の上でイイコが息を引き取っていた。
 ここ数日は、エサも食べることが出来ず、日向ぼっこをするために、小屋の外に出るのが精一杯だった。俺の服を掛けてやると、気持ちよさそうに寝ていた。でも、もはやのどを鳴らすことも出来なくなっていた。
 平成3年生まれだから、19歳か?その間、何度も引っ越しをし、その度に着いてきた。ゴロウやカイト、ライカなどのうるさい新入りも、仕方ないな〜と受け入れてきた。ここ数年は、トイレに行くのを面倒がり、ロフトで大をするようになっていたが、この年齢なら仕方ない。
 北海道からの、2000kmに及ぶ引っ越しは、彼女には辛すぎた。俺も、労ってやる余裕がなかったのが悔やまれる。
 救いは、苦しんだり痛がったりすることなく、静かに息を引き取ったこと。さようなら。

 墓穴の為にスコップを地面に刺し、力任せに掘りあげようとしたら・・・スコップの金属製の柄が折れた。ここでは、金属製品の寿命が短いのだ。

 前にも書いたが、ここの牛舎にはカラスとクジャクがやってきて、子牛のエサを食べ、エサ箱や水桶にフンをする。子牛がどれだけ食べたか判らなくなるし、フンは下痢の大きな原因だ。
 クジャクは、ゴロウとカイトのおかげで、牛舎内ではほとんど見かけなくなった。だが、カラスはゴロウとカイトでは手出しが出来ないとわかるや、我が物顔でエサ箱の周りに居座るようになった。
 助っ人を頼み、エアガンで撃って脅そうと思ったら、カラスはエアガンを持った人を見ただけで、射程外に逃げてしまった。前に撃たれたことがあるようだ。何でもいいから、居なくなればいいのだが、ガンを持たない人は無害と知っているので、すぐに帰ってきた。
 そこで、面倒くさいがカラスを見る度に、石を投げて追い払うようにしてみた。すると、牛舎に来るカラスの数は、極端に減った。でも、俺が居ない間は好き放題やっているようだ。どうにかならんかね〜?

 今日もよく晴れ、気温は26℃まで上昇したそうだ。仕事をすると、汗まみれだ。暑い日は、揚水ポンプで汲み上げたタンクの水が、1日で空っぽになる。
 あまり暑いので、ちょっと泳ごうと思って、大浦に行ってみたが、釣りをしている人が居たので、諦めた。犬達には、水道の水をかけてやった。
 突然思い立って、カヤックを組み立てた。明日も暑いらしいので、ちょっと港で水遊びをしてみようかな?

 先日種付けをしたばかりの、赤の21番が、また発情していた。卵胞膿腫か?

 昨日のカツオを、ガスバーナーで炙って、冷水で冷やし、タタキにしてみた。ガスで炙ると良くないということを聞いていたが、俺には違いを感じることが出来なかった。充分美味くできたかな。