朝の散歩は、何時もいろいろな情報を仕入れられる。
 昨日食べたアカブダイは、皮付きのままカツオのタタキ風にして食べると、格別な美味しさらしい。トコブシが堅いときは、一旦冷凍すると柔らかくなるそうだ。全身筋肉なので、死ぬと弛緩すると言うことだ。

 牛舎に行くと、予定日を過ぎた黄色の12番が、食欲を無くしており、お腹が苦しそうな素振りを見せた。前回のお産で失敗しているそうなので、観察しつつ作業を続けた。
 エサをやっているとき、食べに来ない子牛は、体調を崩している。このところ、そのような子牛が散発的に出ており、体温を計ると熱があった。今日の子牛も、41度の高熱だ。島には獣医さんが居ないので、自分で注射をして、ノートに記録する。
 子牛たちはモクシ(オモテ)を着けていないので、捕まえるのが大変である。逃げ回る子牛の首にロープをかけ、治療する期間だけモクシを着ける。
 イタリアン畑に、テッターをかけた。もうほとんど乾いていた。明日なら、きつく巻いても黴びないと思う。
 お産の観察に行った。灯台下の放牧地で、9回も種付けしたのに留まらない牛が、また発情していた。俺も練習なので、『安茂勝』を着けてみた。

 発情観察の時、ドラム缶を半分に切った物に、エサを入れてやるのだが、牛達は俺を突き飛ばしてエサを食べようとする。人間との関係を理解していないようで、とても危険だ。俺がかわせばいいという意見もあるかと思うが、毎日つき合う牛達は、最低限人を尊重するように躾けないと、何時か怪我をさせられる。北海道で飼っていた牛達は、子牛を取られても俺に攻撃する牛は居なかった。規模が三倍になったここでは、すべての牛に理解させるのは時間がかかりそうだが、焦ってもしょうがないので、ゆっくり教えていこう。俺が怪我を負わされたら、牛を世話できる人が居なくなるのだから・・・。

 ちょっと大浦の入り江を見に行った。西風のせいで、普段は静かな入り江が、波立っていた。まだ子供の海亀が、息継ぎに上がってきていた。ミサゴが、とても大きな魚を足でつかんで、崖沿いに飛んでいった。
 俺も、早く海に潜りたいな〜!

 夕方になっても、出産は進まなかった。腹を蹴る仕草はしているのだが・・・。温泉に入り、晩飯を食ってから牛舎に行ったのだが、のんびり寝ていた。陣痛だと思ったのは、勘違いだったか?