種付け練習


 目が覚めたら、強風が吹き荒れていた。しばらくすると、激しい雨になった。散歩に行けなくてゴロゴロしていたら、外で村営船みしま欠航のお知らせをしていた。この二週間で、二回目だ。

 昨日離乳した子牛は、脱走の恐れがある部屋では、紐で繋いであった。早めに牛舎に行き、解放してやった。のどが渇いていたようで、すぐに水のところに行っていた。
 昨日ロールしたちょっと湿った牧草は、とても人気が高い。いい匂いがしているのだが、今日ラップすれば、良いサイレージが出来ると思う。しないと、熱を持って、やがて黴びてしまう。
 放牧地で、牛の集まりが悪かったので、ちゃんと餌付けすることにした。エサを持って、各放牧地を回る。草が伸びてきたので、牛の体も丸みをましてきた。エサは、舐める程度にしかやらない。
 連動スタンチョンがあるのだが、その前がぬかるんでいたり、別な島で事故があったりしたので、使われていない。俺は、この連動スタンチョンを復活させたいと思っている。ダニの薬を体に着けてやるのも、スタンチョンがあると簡単である。
 観察の結果、二頭の牛が発情していた。

 草が生えていない所があり、二頭しか放牧していない港放牧地の現状を知るため、歩いてみた。かなり広い範囲で、利用できそうな草があまり生えておらず、地面が見えていた。湾から波しぶきが上がり、塩分で植物が育たないとか・・・。地面が固かった。だが、平らだし、もっと海沿いの木は枯れずに生えている。堆肥を撒いたら、何とかならないだろうか?土壌分析をしてもらおう。
 採草地にするためには、放牧地と分けるために、柵を新設しなければならない。いっそのこと、二頭いる牛は他の放牧地に移すか?
 湾放牧地全体を歩いてみた。すると、意外に奥が深く、牛の餌となっている大王竹が繁茂しており、食べきれずに藪に戻ろうとしていた。これを、竹藪に戻してしまうのは、勿体ない。全部を耕すか、採草地との間に柵を作り、放牧地として活用するか?つゆが始まる前に着手したいが、土壌分析してからだな。
 糞出しの後、種付けに行った。使う種は、二頭とも『金幸福』。
 大崎放牧地の発情牛は、鼻輪を手でつかめるほど大人しかった。膣鏡と鉗子を使う人工授精は、器具の消毒と、アルコールを残らず乾燥させられたら、意外に簡単そうだ。ただ、この方法をやりたいなら、サングラスはしない方が良い(^^ゞ
 灯台下の発情牛は、声の届かない遠くまで行っており、なかなか帰ってこなかった。わざわざ向かえに行く。

 今日は温泉に入れる日だった。
 温泉から帰って、飯の準備をしていたら、地元特産の大名竹のタケノコの煮物を差し入れしてもらった。北海道でも、笹のタケノコは沢山食べたが、大名竹の方が圧倒的に美味かった。味付けが上手かったのかな?今がシーズンで、お小遣い稼ぎになるらしいが、俺にはそんなゆとりがない。