Midnight run

 運転手さんと一緒に乗船したため、いろいろなドライバーと知り合いになった。神戸に交雑種を運ぶ人、京都にホルスタインを運ぶ人、牛皮を・・・。いろいろやっている人の話は、面白いのだ。牛の運搬は、夏はリスクが多いのであまりやらないそうだ。だから、牧場の仕事を手伝ったりするそうで、いろいろ為になる話を聞くことが出来た。
 夜9時に舞鶴港に到着し、そこから高速でひた走る。雨は断続的に、強くなったり止んだり・・・。屋根に猫を積んでいるので、90km/h以上は出せない。大型トラックと連んで、ミッドナイト・ランなのだ。人の後ろを走るのは、とても楽なのだ。だが、楽な運転は眠くなるのだ。1時、2時、3時と進に従い、どんどん睡魔が襲ってくる。
 中国道は、ずいぶん昔にも走ったことがある。埼玉から熊本まで、1300kmの道のりを、13時間で走りきった。地味に長い中国道は、夜中に走るには眠すぎる。その時は、1時間ほど記憶が無いのだが、車はちゃんとカーブを曲がり、100kmほど進んでいた。自動操縦装置が着いているのだ。
 その時と同じハイラックスだが、古くなったので自動操縦装置は信頼できない。時々、サービスエリアで休憩するが、荷物満載でリクライニングすることが出来ない。だから、しばらく目をつぶって休んだら、また走るしかないのだ。
 京都近辺は、桜が満開だった。車のライトに照らされた桜も、意外に綺麗だった。広島や山口にすすむ頃には、花びらは散り、葉桜になっていた。
 睡魔との戦いも、夜が明けてきたら、一応終わりを告げる。闇が、群青色に変わり、だんだん白っぽく変化して、朝になるのだ。
 関門海峡に架かる橋を越え、九州に入った。これまで空いていた道だが、福岡が近づくにつれ車が多くなった。雨は強さを増した。そんなに降ったら・・・雨漏りして、足下に水が溜まるではないか!
 鳥栖のあたりには、春小麦が青い穂を出していた。かなり沢山作付けしてあった。電線には、ツバメが雨に打たれていた。路肩には、藤の花が咲き誇り、北海道とは国が違うと思った。
 ゴロウとカイトは、助手席にいることに慣れ、それぞれにくつろげる方法を考えたようだった。だが、雨脚が強くなるにしたがい、ゴロウが寝てた所も水が貯まり始め、一時避難をしていた。
 10時頃にようやく実家に着いた。
 まずは、ローズを乗せた荷台を洗った。ゴロウとカイトは、引き綱を着けて、小屋に繋いだ。俺は、風呂に入って寝たのだ。
 だが、そんなにゆっくりしても居られない。すぐに起き出し、飯を食ってから買い物に出かけた。
 野菜や玉子、牛乳・・・。お店が無いところに行くので、準備はいくらしても間に合わないのだ。
 明日も早いので、もう寝るかな?