船の上は、快適なのだ。

 アカシア丸なのだ。17000トンの船は、ほとんど揺れることなく、東北沖200kmから250kmの航路を、約50km/hで南下した。
 長距離輸送のドライバーは、フェリーに乗っている時間を、休暇と見なされ給料が出ないらしい。だが、牛にとっては、船の方が体が休まり、死亡事故も少ないそうだ。エコの観点からも、運送会社はフェリーなどの公共交通機関を利用しやすくするべきだな。確かに、船に乗っている間、ドライバーは楽だが、遊びで乗っているわけではない。若干の時給を減らしても、ちゃんと給与を出さないと、ドライバーがフェリーを使いたがらなくなる。
 9時になるまで、動物の世話には行けないので、コンビニで買ってあったおにぎりとミニトマトを食べて過ごす。
 ドライバーズルームは、ベッドを間仕切りで囲み、入り口の遮光カーテンを閉めると、個室になる。出航したときは携帯が繋がっていたのだが、岸から離れたら繋がらなくなった。当然、ブログを更新することも出来なくなった。
 ペットルームに行ってみたら、ゴロウとカイトが、おしっこを我慢していた。床を洗浄することが出来る仕掛けになっていたので、俺が居る間ににしてくれたら良かったのだが、ゲージから出してやったら、客室に向かう扉の前に行き、外に出してくれとせがんだ。かなり粘ったが、だめだ。係員にお願いし、牛の世話に行く時、犬たちも同行させた。
 ローズは、大量の水を飲み、ホルスタインを運搬している人から、絞りたての牛乳ももらって飲んだ。
 ポパイが、あまりにおとなしいので、心配して体に触ってみたが、熱もなく穏やかな息づかいだった。隣のヒカリは、ポパイをおそれることなく、乾草を奪って食べていた。馬には、十分な餌と水を与えておかないと、暴れたら大変なので、待遇が違うのだ。
 山羊のジョンは、モトツボクミコに虐められ、引き綱いっぱいまで後ろに下がっていた。でも、ジョンなら大丈夫だろう。
 今後の予定を、運転手さんと話し合った。
 夜9時に下船したら、明け方まで休み休み北九州まで走るそうだ。俺の車は、座席がリクライニングしないので(荷物で・・・)、仮眠も取れない。一気に実家まで南下するのが、俺にも犬にも楽かもしれない。鹿児島市に着いても、ペットホテルを探さないと、俺は安心して泊まれない。
 朝からビールを飲んで、寝た。寝だめも、大切な仕事である。
 船のレストランは、ちょっと高価だが、なかなかごちそうを出すらしい。だが、ドライバーズルームにはアナウンスが流れないので、昼飯の営業時間を過ぎてから食べに行く失敗を犯してしまった。冷凍食品の焼きそばで我慢した。食べられないとなると、余計にひるメニューが旨そうに見えるのは、食いしん坊のサガか?
 洗濯したり、昼寝したり、犬たちと車の所に行ったり・・・。高速を走るので、屋根の猫を庇うため、、シートをかけ直した。猫たちは、新しい家を自分の住み家と認定するまで、何をやっても落ち着かないものだ。
 4時過ぎに、能登半島沖にさしかかり、条件が良ければ携帯の電波が届くらしいが、今日は6時までだめだった。船のレストランが6時に開店し、イカ刺しやモツ煮、鯖味噌などを頼んだ。ビールが欲しいが、このあと運転するので、我慢!今夜は、走るぞ!