わかれ

 荷物の整理が沢山残り、かなり予定が狂ってしまった。
 世の中には、天才的に整理が得意な人もいる。今朝は、その人が来てくれた。あれよあれよという間に、部屋が綺麗になっていく。破滅的に整理が苦手な俺には、絶対に真似の出来ない技だ。すごいな〜!俺に整理が出来なかったのは、持って行くことは出来ないが、捨てるにはもったいなさ過ぎるものばかりだったのだ。もらってもらえることになり、捨てるものがほとんど無くなった。
 今日は、ローズの為の檻をハイラックス荷台に作り、そこに入ってもらう調教をしなければならなかった。長距離なので、檻は頑丈でなければならない。荷台の後端に、鉄製の枠をつける必要があった。こういうときに、俺は貧弱な工具しかない。機械屋さんに相談したら、ぴったりのねじを探してくれ、良い工具でチョイチョイと取り付けてくれた。ありがとう!俺も、今度は良い工具を買おう。
 鉄の枠に、垂木をネジ止めして檻を作った。一度、ローズの妹ピノコを食べたとき、と畜所に行くのに作ったことがあるのだ。
 早速、鶏皮を使ってローズをおびき出し、高台に寄せて留めたハイラックスの荷台に誘導した。警戒心はあるのだが、基本的には信用されているし、食欲には勝てないのだ。荷台に乗ったローズは・・・でかかった!これでは、ジョンが乗れるか心配だ。
 ちなみに、心配していたココアは、見晴らしの良い牧場で飼ってもらえることになった。ありがとうございます。もらわれ先が決まっていない状態で、荷台とローズの大きさを見たら、大いに焦ったと思う。
 マロンとブランカを、引き取りにきてくれた。口笛を吹いたら、遠くの放牧地から駆けてきたのだが、家の前に止まった車の数を見て、ちょっと警戒していた。馬運車の準備が出来たところで、マロンを引いてみたが、全然乗ろうとしない。以前、森町から連れ帰ったときは、久しぶりに再会した俺に引かれ、簡単に乗ったのに・・・。これが、今生の別れになるのだが、そう思っている俺の気持ちが分かるのかもしれない。だが、1時間以上も押したり引いたりしている人間は、だんだんイライラしてくるのだ。なだめたり怒ったりしながら、ポパイをおとりとして乗せたりしながら、やっとの思いで乗せることが出来た。良い牧場らしいので、きっと幸せになれると思う。
 馬と戯れている間に、水道屋さんも来てくれた。次に入る人が居るとは思わないのだが、誰か入ったときに壊れた水道ではかわいそうだ。
 クボタM8030にブロードキャスターを取り付け、暴風ネットを入れて、その上に昨日積めなかった工具類を入れていった。明日から雨が降るらしいので、シートをかけるべきだな。
 監視カメラを撤去した。このカメラのおかげで、ずいぶん助かった。年数が経って、だいぶ疲れているが、まだ働いてくれるだろうか?私設電信柱の上に取り付けた無線ランの装置を、牛舎の屋根から立てかけたはしごで取りに行った。高いところで不安定な壊れたはしご・・・。あまり楽しくなかった。
 満を持して、ソックスの第二回ホルターブレーキングをした 
 ポパイに引き綱を着けて丸馬場に行くと、ソックスも着いてくるのだが、入り口付近を離れられない。俺がポパイを引いて入り口付近に近づくと、さっと外に逃げてしまう。焦らず、何周も何周も歩いて、ソックスの警戒心を取り除いていった。
 ソックスの警戒心が無くなったところで、扉を閉めて、ポパイだけ外に出した。俺は、閂を閉めてから中に入った。ソックスは、逃げる来満々だ。逃げる馬は、追うしかない!走らせてから、ちょっとプレッシャーを緩めたら(プレッシャー&リリース)、止まって俺に顔を向けた。そっと近づき、顔をなでる。かなりなで回したが、逃げない。ちょっとは、調教が入ったと言うことか?
 自由になでさせるようになったら、引き綱のにおいを嗅がせたり、体をこすったりした後、ホルターに取り付けた。自由が奪われたことに驚き、当然抵抗するのだが、落ち着かせ、回転方向への歩み寄りから始め、だんだんと前に歩けるように教えていった。覚えは悪くないかな?
 瀬棚では最後の晩餐となったので、富美栄でごちそうを食べたのだ。家に帰り、自作の風呂に入った。大きくて、気持ちが良かった。