ホルターブレーキング

 昨日書いたとおり、ソックスを連れて行くためには、ホルターブレーキングという最初の調教をしなければならない。我が家には、適度な広さの閉鎖できる馬房が無いので、丸馬場を使うしかない。
 とりあえず、俺とソックスは友だちなので、丸馬場に誘い込むことは出来た。今日は、閂もしっかりかけて、プレッシャーをかけ始めたのだ。ところが、一度脱出に成功しているソックスは、扉に体当たりした。老朽化が進んでいた大扉は、もろくも砕け散ってしまったのだ。
 しばし呆然とする。ホルターブレーキングしない馬は、一人では扱えない。大動物の馬は、ペットとして友情関係だけで飼えるほど、甘くはない。と言うか、危険で人を怪我させかねない。扉を直して、再挑戦するしかない。
 どうせすぐには丸馬場に入らないので、糞出しに行った。今日は、ドロドロになったパドックの糞も排除した。ユンボをさっさと渡したことを、すごく後悔した。一輪車で地道に作業する。
 カイトは、ゴロウより引き綱に抵抗を示したが、10mも進んだらすぐに慣れて、俺に寄り添って歩いてくれた。普通こんなに簡単に調教できないと思うのだが・・・。やっぱり賢い(親バカ)。
 昼飯前に、扉を修復した。
 午後から、再度挑戦。4頭とも馬場に入ってしまったので、ソックスに逃げられないように出すのが大変だった。アホのマロンは、ホルターを引っ張って出そうとしたが、扉を開けようと苦労している間に、振り切って逃げてしまった。こいつも再調教しなければならない。
 2頭まとめて、プレッシャーをかけ、走らせる。ホルターブレーキングをするには、直径15mの丸馬場はでかすぎる。追いかけるのが、大変なのだ。とりあえず、何周も何周も走らせ、疲れるのを待つ。ソックスのホルターブレーキングなのに、何でマロンが一緒に走っているのだ。大汗をかくまで走らせ、プレッシャーを緩めて、抵抗無く引かれるようになったところで、マロンを外に出した。
 ソックスの調教だ。扉の前には、コンパネを2枚立てかけ、扉の下をくぐろうという気持を打ち砕く。
 いつもポパイと走っているソックスは、若いのでとても持久力がある。それに、自分の足に相当自信を持っている。おかげで、俺がヘトヘトになるまで走られた。それでも、降参しないのだ。
 ホルターブレーキングは、始めたら効果が出るまで止められない。止めると、苛められただけと認識され、二度と捕まらなくなるのだ。追って追って追って・・・2時間くらいしたところで、ようやく俺に顔を向けたら追われなくなると理解し始めた。何度も、正面から近づき、顔を撫でたら後ずさりする。
 これまでに何頭かホルターブレーキングをしたが、これほど手こずった馬はいない。友人のクリコでさえ、2時間後には、自分から歩いて俺に近づいてくるようになった。だが、ソックスは近づいてこない。顔を触らせるようなってからも(これまでだって、友情で触ることは出来ていた。でも、ブレーキングをしていないと、気まぐれでどんな行動をするか判らないのだ)、ホルターをかけようとすると逃げた。体力の限界が近づいていたが、改めて追う。
 疲れたな〜〜〜!この馬は、きかん気が強いのか?それともただのアホなのか?引き綱を着け、ちょっとだけ歩くようになったところで、ソックスも疲れの限界に達してしまったので、今日の調教は止めた。明日もやらないと駄目だろうな〜〜〜。
 俺も疲れ切ったので、すごく久しぶりに、フロにお湯を貯めた。このフロは、でかすぎるが気持ちが良いのだ。入るためには、一旦外に出なければならないが・・・。