突然ですが、転出します。

 ここで営農を始めて8年経つ。振り返ってみると、苦労したことばかりが思い出される。勿論楽しいことだってあった。だが、新規就農者が営農するには、この農地の条件は厳しすぎた。急傾斜と重粘土質、水が集まる牛舎。
 急傾斜の牧草地は、命がけの収穫作業となり、機械に無理をかけてしばしば壊れ、経営を圧迫した。テッター作業で、片後輪を浮かせて作業するなんて、ここでは普通のことだ。雨上がりすぐに草地に入ると、トラクターが進路を維持できなくて、転倒防止のために斜面下に逃げることも多かった。 
 雑品のような農機具を使っていたのだが、作業性が悪すぎたので、必死に働いてそれなりの機械を買い揃えた。作業効率が何倍にもなったが、それでやっと人の3倍働いて半分の収穫を得られるようになった。
 雨水は、斜面を伝ってすり鉢の底にある牛舎や乾草庫に流れ込んだ。牛舎の周りは、トラクターがぬかって入れなかった。牛舎内のコンクリートの隙間から、水が湧き出し溜まった。
 これを解消するのに、何本もの暗渠排水路を掘った。溝を掘ると、泉のように水が湧き出し、川へと流れた。パイプを埋め、ホタテの貝殻をダンプに十数台も買い、溝に埋めたり地表に撒いたりした。牛舎の周りが少し乾いたら、砂利をダンプ何十台も買って敷き、トラクターが走れるようにした。
 乾草庫周辺を掘り下げ、乾草庫内は貝殻で床を高くして、水の流れ込みを防いだ。
 コンクリートを敷き、子牛のパドックもいくつか作った。
 ぬかっていた牛舎周辺の土地が乾いたので、堆肥舎や踏み込み式牛舎を建築し、人並みの経営をしようと努力してきた。
 俺に出来ることは、すべて出し尽くしたと思う。でも、これが限界だ。

 転出するに当たって、農機の処分をしなければならないのだが、既に多くは行き先が決まってしまった。
 残っているのは、メムロのモアコンディショナーと、切り草を作るシリンダーカッターくらい?モアコンは、昨年ディスク内のオイルを交換して添加剤を入れた。すり減ったソリの部分を、新たに取り付けた。シリンダーカッターは、刃を研ぎ直してもらったばかりだ。
 他に、去年買ったばかりの煙突式ストーブと、ほとんど使っていないFF式中型ストーブもある。
 まぁ、引っ越し費用を少しでも捻出したいので、ご協力ください(^^ゞ