盲目のキサラギ 解氷大作戦

 夜中に何度か起きてチェックをしていた。その度に、フク(賢深)は寝そべっていて動きはなかった。だが、麻になって見たら、子牛が生まれていた。急いで出勤した。
 子牛は、小さめの牝だった。フクの子は大きくないのだ。名前は『きさらぎ』。尿溝に落ちて汚れていたので、ベビーバスにお湯を張って、中で洗ってやった。
 子育ても上手くないフクは、米ぬかをかけてやっても、あまり熱心には子牛を舐めなかった。仕方ないので、俺が一生懸命タオルで擦ってやった。
 家に連れ帰り、ストーブの前で擦る。キサラギの目は、白く濁っていて、たぶんまともには見えていない。盲目の子牛を育てられるのか判らない。エサや水を自分で探せないようなら、肥育するまで育てるのは難しいだろう。

 最近調子が落ち込み気味で、いくつかの仕事を平行してやれなくなっている。
 キサラギに人工初乳を三回飲ませた。
 家の水道が完全凍結してしまったので、牛舎からもストーブを持ってきて、半地下室を温めた。だが、なかなか解氷しないので、薪ストーブにも火を入れた。薪を用意していなかったので、その辺にあった木材を斧で適当な長さに切り分け、薪にした。
 寒くて昨日サボっていた糞出しを頑張った。寒いと、フンが凍ってコロコロ転がるため、一輪車に沢山積めないのが困るんだ。
 暗くなり始めた頃に、ようやく水道が解氷した。今夜は、シャワーを浴びられる。