面接交渉

 朝牛舎に出勤途中、牛の発情を発見!ヤスヒメ(安平←平茂勝)だ。まだ乗りたがるので、種付けには早い。でも、前回は呼ぶのが遅くて排卵済だった。迷ったが、午後から来てもらうことにした。
 初生子牛がいると、仕事速度が遅くなるのだ。元八郎は、ようやく代用乳を受け入れた。でも、哺乳瓶の乳首に慣れたのは夜牛舎の時だった。朝は、5秒吸ったら乳首を吐き出し、一息ついていた。ミルクの出が良すぎるようだ。
 蜜五郎は、母乳をたっぷり吸っているらしく、黄色い便をたっぷりしている。吸っている姿をほとんど見ないのも、母乳のでがよい証拠だ。このまま母乳で育てるか、人工哺乳に切り替えるかを、そろそろ決めなければならない。迷う。

 娘との面接交渉日だった。馬達は、励ましながら俺を見送ってくれた。
 離婚は親の勝手でやったことだ。でも、面接交渉権は子供の為にあるので、親の勝手で侵害してはいけないと思う。
 今回は、牧場で一日たっぷりではなく、町の食堂でたった2時間という寂しいものだった。
 娘は、俺の顔を見るなり、
「お父さん、怖くないよ。ほら、ハルちゃんのお父さんは、怖くないよ。」
と言って、俺に抱きついてきた。娘は、ひょうきんに振る舞い、笑わせてくれました。
 食後、私と二人で公園に行き、自転車に乗ったり、車の屋根に登ったり、タンポポの綿毛を飛ばしたり・・・。ゴロウ達と遊びたそうだったが、公園で車から降ろすわけにはいかない。
「お父さんところには、お化けが出るって言うけど、大丈夫だよね?ハルちゃん、クマのお化け、パンチでやっつけちゃうよ。」
「大丈夫だよ。お化けが出ても。お父さんがやっつけてやるから。」
限られた時間を使って、精一杯楽しく過ごした。
 でも、母親に指定された時間は、あまりに短すぎた。
 俺特製のヤマブドウジャムを渡すと、娘はジャムパンを食べると言い出した。別れの気配を感じ、出来るだけ時間をかせごうとしているのだ。そのうち、別れなければならないと判ると、
「お父さんと帰る。お母さんいらない。」
と泣きじゃくってしまいまった。
 だから、面接のチャンスは、ちゃんと補償してやるべきだった。両親とも大好きだから、娘に相手の悪口を言うべきではないし、娘の前ではケンカもするべきではない。必要以上に、娘を傷つけてしまうからだ。まだ、ちゃんと考えを伝えることは出来ないが、しっかりと自分の意志を持った、一人の人間であることを忘れないで欲しい。

 ヤスヒメに、種付けをしてもらった。良い発情だそうだ。『鉄兵』をつけた。