子牛を担ぐ日 室内牛 キツネにおチョくられる

yonemiki2008-11-24

 離乳した子牛たちは、3kg/日のスターターでは足りないと言っている。他のエサ箱も、綺麗に空っぽだ。ちょっと気分いいなと思いつつ、窓の外を見て、見てはいけないものを発見してしまった。
 昨日のゴタゴタで、出産予定日を過ぎたスズコとモモカを出してしまった。スズコは、未経産牛の乳房のようだったので、絶対に産まれないと確信していた。モモカは、乳量豊富なのでもっと張るはずだ。
 なんてイイワケしている場合ではないのだ。どっちの子か解らないが、とりあえず拾いに行く。冷たい!本当は羊水を洗い流してはいけないのだが、そんなことを言っている場合ではない。瞬間湯沸かし器のお湯で、暖めながら汚れを洗い落とす。羊水は、体を守るらしいが、乾きにくいのだ。
 シーツでくるみ、ドライヤーの熱で暖める。さっさと子牛たちにエサをやり終え、子牛を毛布にくるんで担ぎ上げ、家まで走った。小指には、人工初乳2袋と、哺乳瓶、生菌製剤の入ったビニール袋を下げる。200mの上り坂だ。全身の筋肉が悲鳴をあげる。
 俺の匂いをかぎつけたローズが、エサを欲しいとねだったが、ちょっと待ってくれと言うと、『ブッ!(訳:解った)』と言ってくれた。
 
 ストーブを全開にして、電気毛布を出す。ドライヤーで暖め、体をタオルで擦る。ちょっと人心地したところで、人工初乳を哺乳瓶で飲ませた。ちゃんと飲んでくれた。胎便を出させ、さらに暖める。
 ちょっと寝てくれたので、糞出しに行く。モトツボが、発情していた。この時、相手がモモカではないのを、不審に思っていた。出産したのは、スズコ(安茂勝産子)だった。子牛は、『鈴太郎』(北平安産子)だ。
 帰ってみると、鈴太郎は元気になっていた。2回目の人工初乳も、元気よく飲み干した。部屋の中を散策し、小便をたらし、滑って転んでいた。体力的ゆとりが回復するまで、出来るだけ部屋の中で遊ばせることにした。胎便だけは、ティッシュでお尻をさすって出させ、無事回収した。尿は、バスタオル3枚を使った。
 出産は、俺の仕事の中で最も大切な仕事だ。これを失敗すると、1年の仕事が台無しになるのだ。
 寝ている合間を見計らって、糞出しのつづきを終える。
 元気になった鈴太郎に、チョッキを着せて牛舎に連れて行く。

 モモカが帰ってこないことに気がついた。もしや、モモカまで外で出産?日が短くなり、薄暗くなった放牧地へ走る。竹藪の中を探すが、見つからない。妊娠牛の群に紛れ込んでいないか識別して回るが、居ない。山のてっぺんまで3回も登った。
 暗くなると、懐中電灯の明かりに、目が反射するのを目印に探す。まださがしていない、最深部に行こうとしたとき、山頂に光る目が見えた。居た!と思って山を登るが、何所にも見えない。子馬が食い殺されるような、切実な悲鳴を聞き、産まれた子牛が襲われたかと思って坂を駆け下るが、キツネのイタズラだった。
 仕切り直す。もう一丁の明るい懐中電灯を持ち、犬を同行させ、放牧地最深部に向かう。犬が吠える!果たしてモモカが居た。子牛も立っている。体も乾いて、すごく元気だ。モモカなら大丈夫だと思ったが、さすがベテラン!
 子牛(百合茂産子)は雌で、鈴太郎よりでかい!これを担ぎ上げ、山道を歩く。モモカは、子どもを取られると思い、俺の進路をふさぐ。鼻先を蹴って、道を開けさせる。重〜い!道はぬかるむ。転べない!
 やっとも思いで牛舎にたどり着き、他の牛を出してモモカを繋ぐ。人工初乳を飲ませたら、チュ〜ッと吸い終わって、モモカの乳首にもすごい勢いで吸い付いていた。
 鈴太郎にもミルクを飲ませ、長い1日が終わったのだ。ちょ〜疲れた。