ローズの引っ越し計画1 

 やらなければならない仕事と、やりたい仕事が一致しないとき、人は悩むものだ。
 ローズが、電気の効いていない牧柵ケーブルをくぐって、路肩の草を食べ始めた。箱入り娘のローズは、現在の柵の中をとても気に入っており、子牛のエサが置いてある牛舎を襲ったことはまだ無い。米ぬかを練ったエサを、沢山やることや、電気を効かせることで、脱走は防げる。しかし、今年は道路脇の並木下除草をやってもらいたいと思っている。
 草が伸びきってからでは、放牧どころではないので、牧柵ケーブルを張り巡らした。基地は、旧鶏小屋だ。装置のスイッチを入れてみて、やけに頼りない反応に驚く。ナンデだ?触ってみたら、電圧が低い。
 ローズを、米ぬかにヨーグルトを入れた団子で誘い出し、柵の中に入れてみた。新天地が嫌いなローズは、電圧の低いケーブルを突破して、家に帰ってしまった。
 何処がいけなかったのだろう?
 
 脱走と言えば、ビクターである。体中傷だらけになりながら、バラ線などの柵をくぐって脱走し、北山採草地の大切な牧草を食害する。これはイタチごっこで、一つの脱柵経路を塞ぐと、新たな場所を壊される。根本的に、強力な電気を流すしかないが、もうちょっと時間がかかる。
 ポパイの咳が、また気になり始めたので、薄手の馬着を着せた。