悲しい朝 ハム泥棒 

 目が覚めると、まずゴロウにてんかんの発作を抑える薬を飲ませ、そのまま一緒に馬を見に行く。馬達は全員、草架の前にいた。まだ産まれていないのかと思って立ち去ろうとしたが、地面の窪みにやけに白いものが落ちている。まさかと思って近寄ってみたら、そのまさかだった。
 オリーブとそっくりの、白と茶のブチの子馬が、横たわって冷たくなっていた。体は舐められて綺麗になっていた。とても大きな雌だ。難産で死んでしまったのだろう。その体を必死に舐めたのに、息をを吹き返すことは無かったと思われる。
 畜産業という、最期は命をいただく職業の一翼に就いているが、このような無為な死への悲しみに対しては、なかなか慣れることが出来ない。救えなくてゴメン。
 
 実は、10日ほど前から、安売りで買った豚モモブロック肉2個を塩漬けにしてあった。美味しいハムを作るためだ。煙をかけて燻製していたのだが、今朝の事件でしまうのを忘れてしまった。
 朝牛舎から帰って、ボイルしようと見てみたら・・・無い!すごく楽しみにしていたのに、2個とも無くなっている。
 寸胴鍋二つを組み合わせた燻製機の中に、肉を入れるところをゴロウに見られている。しかし、ゴロウはそんなことをしないだろう。もししていたら、挙動不審になるのですぐにばれる。カラスの声が聞こえる。カラスだろうか?カイトの仕業かも知れないと思ったが、晩飯ではしっかりエサを食べていた。
 やっぱりカラスかな?