瓜三郎ブラッシング 得意顔 ビクターのサドルブレーキング

 寒さが一定しているので、発酵床で暖かく寝ることが出来る子牛たちは、風邪もひかずに元気である。エサやりの時に
「出来るだけ、子牛に触って欲しい。」
とリクエストしていたのだが、Tさんはそれを忠実に守り実践しているようだ。

 俺は哺乳後、瓜三郎のブラッシングをした。気持ちよさそうだった。結構時間をかけてブラッシングしたのだが、その間Tさんはエサやりを終了し、他の子牛を手懐けてブラッシングしていた。
 ウットリ顔の子牛をブラッシングするTさんの顔は、とても得意げだった。
 
 昨日久しぶりに調教したビクターについて、引き続き調教をした。上手く言ったら、サドルを乗せるところまでやろうと思っていた。
 だまし討ちではなく、ゆっくり時間をかけて近づき、体をなで、自分から捕まるまで待つ。馬つなぎ場でエサを与え、ブラッシングするが、ブラッシングされ慣れていないので、ちょっと緊張気味だった。手で体を撫でられるのは好きになったようだ。
 続いて、鞍とパッドを持ってきて、臭いを嗅がせる。パッドを背中に乗せたりする。
 丸馬場に移動し、しばらくプレッシャーを与えて、開放する。ゆっくり近づき、パッドを乗せる。さすがに、鞍を乗せようとすると逃げる。押さえつけるのではなく、馬が初めて見る鞍を背中に乗せることに対し、警戒を解いて受け入れる気持ちになるまで・・・重たいウェスタンの鞍を、片手で高々と持ち上げて待ち続け、ゆっくりと乗せた♡
 ビクターは、頭が良く、集中力のある、とても良い馬だ。俺は危害を加える人間ではなく、鞍は危険なものではないことを理解し、受け入れたのだ。腹帯を締めるときも、ほとんど抵抗無かった。

 さて、鞍を付けたら乗りたくなるのが人情!乗せてくれるかどうか?鞍を持って揺さぶってみる。しかし、体重をかけるとなると話は別だ。あぶみに片足をかけまたがろうとする瞬間、走り出して俺の体は置いて行かれる。ホルターの紐をつかんで止め、落ち着かせる。反対側からチャレンジ。やはり、走り出されて乗ることが出来ない。何回か繰り返し、時には雪の上に投げ出されることや、鞍で体を打つことも・・・。
 一度だけ、なんとかまたがった瞬間、ダッシュされてフルストップ!前に放り投げ出されてしまった。基本的に、雪の上なので何ともないのだが、サドルブレーキングでは、落馬をしてはいけないことになっている。
 誰かに、ホルターを持ってもらった状態で乗り、それから走られるのなら何とかなるのに!っと不満。ところが、ビクターは俺を受け入れた。ゆっくりまたがった俺を、走り出すこともなく、黙って立っていた。
 走り出すと思っていたので、拍子抜けしたが、今日はここまで。長時間の調教にも、良く耐え、よく考えてくれた。
 調教というと、とてもイメージが悪いが、馬の学習である。馬がその気になるまで、万事を尽くして根気よく待ち続ける。人の教育にも通じるところがあると思う。