子牛と仲良くなる! 薬の見忘れ! モモカ大発情!

 綺麗な朝だった。新雪が積もり、朝日に輝いていた。昨日、友人から差し入れしてもらった煮物をおかずに朝飯を食い、いつもどおり牛舎に向かう。
 久しぶりに、犬ぞりを使って出勤しようと思ったが、ヨーグルトなどの荷物があったので歩いていく。何度も転びそうになる。

 早朝は冷え込んだようだが、風も少なく日差しも暖かかったので、子牛たちは元気だった。パドックに出して、日光浴をさせた。エサとミルクをやった後、久しぶりにチビ子牛たちの体をブラッシングした。
 頭数が少なかった頃、俺はもっとマメに子牛にブラッシングをしていた。だから、子牛たちは俺のことが大好きだった。
 頭数が増えてきた最近、注射をするときしか、子牛の体に触ることが無くなってしまった。子牛の中には、俺が入っていくと逃げる者が増えてきた。
 初めは戸惑っていた子牛たちが、体を押さえなくても大人しくブラッシングされ、気持ちよさそうに頭を下げていた。次の牛にブラッシングしていると、俺の顔を舐めに来たり、頬を寄せてきたり、髪の毛を引っぱったりする。
 忙しさにかまけて、こんな楽しいコミュニケーションを忘れていた。

『子牛と仲良くなる!』
 今年のNew Year Resolution だ。

 牛飼いとして、もっと牛と仲良くならなければ、勿体ない!
 可愛い子牛は、俺の心をもっと和ませてくれるだろう。
 そして、俺に心を開いた子牛は、売るときにも高く売れるものだ。
 
 快調に新年を迎え、差し入れの餅を食べて、出荷牛を研きに行く予定だった。しかし、とても辛い。気持ちは動くのだが、体が動かない。よく考えたら、朝から薬を飲んでいなかった。午後からの仕事は、キャンセルするしかなかった。
 
 夜には体調は戻り、牛舎周辺の除雪や、糞出しなどもやれた。モモカが、すり切れて尻尾の付け根から血を出すほど、発情していた。採卵したいと思っていたが、エサの豊富な牛舎周辺においておくには太りすぎる。採卵しても、なかなか受精卵移植していただける酪農家も少ないので、明日人工授精の器具を借りてきて、自分でやってみようかな〜と思ってしまったが、やり方を教えていただけるほど獣医さんにゆとりがあるだろうか?