初めての家族旅行 

 毎日牛舎作業を手伝っている妻の要望に応える形で、札幌近くの乗馬クラブで開催された、北海道地区乗馬大会を観に行った。
 妻の友人に会うのと、娘に乗馬を見せるという目的もあった。
 考えてみたら、農家になってから6年間、休みを取ったことがなかった(市場にいくのは、仕事)。休むことに大してかなりの抵抗があり、直前まで態度を決めかねていた。しかし、一昨日のうちに、牛の世話をしてくれる人に朝夕の子牛の世話をお願いして、丸一日休ませてもらった。
 
 同じ北海道でも、瀬棚から石狩市まではかなり遠い。燃費と調子の良いハイラックストラックで行ったので、ゴロウとカイトは留守番である。
(暑さと風圧で可哀想だから) 
 行きは長万部倶知安・赤井川経由で4時間もかかった。270kmくらいあっただろうか?クーラーの効かないトラックの助手席に着けたベビーシートで、娘は辛抱強く乗っていた。ドアミラーに向かって手を振ったり、いないいないば〜!をしたり・・・。
 
 やっとの思いでたどり着いた乗馬クラブには、当然いろいろな馬がいた。娘は、馬を見ても全く物怖じしないのだが、腹の下を通っても大丈夫な我が家の馬と違って、他所の馬には俺たち親が相当気を使う。
 しかし、何頭かの馬に触り、人が馬に乗っているのを見て、何か感じることがあったと思う。
 こんな遠くまでドライブし、知らない人や馬に会ったのに、娘はとても落ち着いており、マイペースで楽しんでいるのには驚いた。
 
 妻は、目的の友人に会うことが出来、大会を観て嬉しそうだった。
 俺は、ブリティッシュスタイルの乗馬を間近に見るのはほとんど初めてだが、俺にはブリティッシュは向かなそうだと思った。手綱がタイトで、馬が苦しそうに見えてしまう。
 でも、この大会を観て、もともと競技好きな俺の血が騒いだ。せっかく馬が6頭もいるのだから、うちの馬にもう少し乗ってみようと決心した。そのためには、丸馬場のドアを修理して、ポパイやオリーブの調整をしたり、ビクターやジュリアの鞍ツケをしなければならない。
 
 帰りは、赤井川・岩内経由で帰ったので、距離は230kmほどだったが、トウキビ売りのおじさんと話し込んだり、岩内で回転寿司を食べたりして、結局4時間かかってしまった。
 娘は、おじさんや寿司屋の奥さんにも、丁寧に『こんにちは』と最高の笑顔で挨拶していた。日本海に沈む夕日を眩しそうに見ながら、何かを感じてくれたと思う。こういう体験は、記憶から失われることがあっても、娘の成長にとってはとても大切なものだと思う。
 
 帰宅してからも、とても機嫌がよく、その体力と気力の成長ぶりにビックリした。娘の成長を感じられた、楽しい一日だった。