シャレにならない暑さ! 一撃必殺!

 俺は、日本一不快指数が高いと言われていた熊本県八代市出身だ。市のほとんどが干拓地で、湿度が高く、蚊が多い。今でこそクーラーが普及したと思うが、俺が子どものころ部屋には扇風機も置いてくれなかった。8月に室温が30度を下回ることは1日中無く、ジットリ汗ばみ体表が乾燥することはなかった。
 今では東京も暑くなっているらしいが、18歳で東京に上京し『なんて涼しいんだ!』と感動したものだ。
 人間の汗腺は、生後三ヶ月までの環境でその数が決まってしまうらしい。そのため、北国育ちの人は汗が出にくいので、暑さに弱く熱射病にかかりやすいそうだ。俺はその逆で、体が熱を持った分、汗を吹き出す。
 
 我が牧場の牛舎は谷底に建っており、無風で日差しが照りつけると、猛烈に暑くなる。扇風機で風を送らないと、子牛たちが熱射病になってしまう暑さである。各部屋に扇風機を着けてからは体調も戻ったようだが、北海道でこんな状態なら他の地域はどうなっているのだろう?
 俺たちも、脱水状態を起こさないように、補液飲料を3リットルほど飲みながら作業をする。牛達は風の通る丘の上で昼寝!馬たちは、日中は開放馬房内で日差しを避けている。
 朝牛舎が終わった後、外作業は不可能で、やらなければならない仕事がどんどん溜まっていく。
 
 日中、涼しくもない部屋の中で休んでいると、妻が来客に応対して開けた玄関から、スズメバチが侵入してきた。最近、家の周りにスズメバチが沢山飛んでいるのを知っていたが、鈍感な俺はあまり気にかけないでいた。
 接客後、部屋に戻ってきた妻がそのスズメバチに気がつき、娘が刺されたら大変だからすぐ対処するよう要請があった。
 
 スズメバチは、それほど動きが素早くないので、一撃でしとめればそれほど危険なことはない。教員時代は、『生物教師』という理由で何度も校内で発見されたスズメバチの巣を殲滅していたが、何度も追いかけられて頭に留まられたことがある。しかし、刺される前に手で払いのけて無事だった。
 
 ハエ叩きを持って、しばし観察。網戸に留まったので、狙いを定めて・・・
 必殺の一撃を食らわせた!
「あ”〜〜〜!」
妻の叫び声である。狙いを外したわけではなく、そのスズメバチは即死した。しかし、強すぎる一撃は、古くなった網戸のアミを破ってしまったのだ!
 破れた穴から、仲間のスズメバチが2匹3匹と侵入してきた。それを、ハエ叩きでボレー・アタック!窓を閉めたら、蒸し風呂である。
 急いで地下室に行き、いくつかある変形した網戸の中から合いそうなヤツをを拾ってみたらバッチリはまった!よかった〜!