今年初めての牝子牛 ゴミが金になる? もう一頭?

 娘は保育所に行った。エサやミルクを妻に任せ、俺は牛舎の壁に穴をあけて、糞出し作業の軽減を期した。現在福四郎と浪三郎がいる部屋は、糞出しまでに4回糞をずらさないと一輪車に積み込むことができないのだ。
 壁板に適当な穴をあけ、骨材の走りを見て外壁のトタンを電動丸鋸(木工用)で切った。一応、一流メーカーの丸鋸(現品処分品をさらに値切った)も持っているのだが、作業が乱暴なので、勿体なくて使えないのだ!
 穴の外に一輪車を置いて、糞出しをして感激♡。これまでの苦労が何だったのだろうと思うほど、作業が速い!
 
 ふと、踏み込み式牛舎の方を見ると、牧柵の外に黒い固まりが落ちている。
「生まれた!」
臨月のツボミが、外で出産したのだ。しかし、ツボミの姿は見えなかった。育児放棄したのだろうか?電気牧柵のために、側に近寄れなく諦めたのだろうか?
 巨大なお腹をしていたわりには、一目見て牝と判る小さな子牛だった。ちっこくて可愛いので、『はなえ』と命名。学習塾室長時代の教え子の名だ。頭が良くて、あまりに可愛い子だったので、一緒に働いていた女性講師が(現在、韓国軍の日本語教師)、
「可愛くって、食べちゃいたい!」
と言うほどだった。大きく育って欲しい肉牛にはつけたくない名だが、ツボミの子だし・・・。
 体は既に乾いており、近くに胎盤が落ちていた。出産後かなり時間が経っているようなので、慌てて人工初乳をカテーテルで飲ませた。3時間おきに3回飲ませたが、免疫力は大丈夫だろうか?
 
 金属需要の高まりと共に、我が家にある古い機械や鉄パイプ、アルミサッシ等を欲しいという業者の方が、壊れて持て余していた機械を引き取ってくれることになった。先住民が残していった水道管(鉄管の中に、コンクリートが入っていて、普通の鉄くず屋さんでは引き取らない)まで持って行くという。しかも、驚きの価格!早速、漁師の店に食事に行ってしまった!
 
 帰宅してみたら、放牧地の山頂で牛が吠えていた。吠える巨牛『メロン』は草架の側にいたので、不審に思った俺は丘を駆け上がったところ、ツボミが居り、牧柵外の草むらにもう一つの黒い固まりが・・・!
双子だ!
我が牧場始まって以来の双子だ。こちらも牝で、同姓複数産子ということになる。異性複数産子は牝子牛の生殖能力が無くなる事が多いので、繁殖牛としての価値が無くなる。そうならなくて、良かった。
 名前は・・・?『はなえ』がしっくりし過ぎたので、もう一つはなかなか思いつかない。結局『すみれ』になった。すごく元気に走って母親の元に駆け戻り、母乳を吸っていた。山頂からゆっくり追って、牛舎まで自力で帰らせた。一応、人工初乳も飲ませた。
 2頭も出産したツボミは、はち切れそうだったお腹がぺしゃんこに潰れ、あばら骨と腰骨が浮き立ったガリガリ牛になっており、その負担の大きさを物語っていた。