ロール運び続き 鎌田實先生の講演会

今日は、ロール運びの続きだ。朝牛舎を妻にバトンタッチして、俺は山に向かう。なんか雨が降りそうな気配があるのに、なかなか降らない。犬達を引き連れ、棒を投げて遊んでやったりしながら、ロールを順調に運んでいたのだが、一度荷崩れして狭い農道に3ロールも落としてきたり、妊娠牛の群が馬の牧柵に沿って森を突っ切り脱走したりした。
 
 今日は、妻の母親が東京から応援に来てくれたので、いろいろ助かる。鎌田先生の講演会に間に合うよう、焦って気が急く俺は、娘に牛乳とメープルシロップをつけた食パンを食べさせて、そのまま二人で会場に向かう。妻は、いろいろ準備して後からやって来た。
 
 鎌田先生は、累積赤字で潰れそうだった諏訪中央病院に赴任し、経営を考えれば沢山の薬を出すことがいいに決まっていたのに、注射や薬を減らし、住民に健康講話を年80回も開くなどして、住民の健康意識を高める努力をされてこられた。
 訪問看護や在宅医療などを始め、寝たきり老人にお風呂を入れたり、デイケアで老人達を車いすで公園に連れ出したり、ホテルでご馳走を食べる企画など、患者が『生きてて良かった』と思えるような心遣いをされてこられた。
 恵まれないから工夫をし、お金がないからもてなしの心を忘れずに頑張ってこられたのだ。
 
 結果として、住民の健康意識を高め、寿命を延ばし、沢山のボランティアの支えの元、病院自体も成長していったという。
 医療は、箱物や体裁を整えることではなく、住民が安心して健康に暮らせることで町づくりに大きく貢献すると言う話を、具体的な例を挙げて楽しく判りやすく話して下さった。金がないから医療を縮小させるのではなく、金がないから予防医療で医療費を削減する必要があると話しておられた。
 人はいつか死ぬもので、それが長いか短いかの違いがある。しかし、患者さんが『生きてて良かった』と思えるたり、PPK(ピンピンコロリ)と生涯幸せにくらせる医療を目指してこられたことが聞けて、とても感動した。
 
 現在、長野県茅野市の諏訪中央病院は、老健特別養護老人ホームも備えた素晴らしい病院に成長したそうだが、それにより医療費は下がり、人口も増えていったそうだ。
 良い医療が人を呼ぶのである。良い医療とは、高度な専門医をそろえることではなく、患者をもてなす思いやりの心(ホスピタリティー)と、喜ばせるサプライズだそうだ。
 
 我が町も、そのような医療を目指して欲しい。
 医療を育てるのは、行政だけでなく、住民意識にも責任があると思う。専門医の必要があるときは、高次医療機関にかかる必要もある。しかし、我が家では、娘や妻が具合が悪くなったとき、まず診療所での診察や検査を受けることにしている。ほとんどの病気は、診療所で間に合っている。
 初めから、八雲や函館・札幌の病院を選んでしまっていては、地元に安心してかかれる『かかりつけ医』が定着して下さらないのでは無かろうか?