敷きワラ剥がし進む 干ばつ テッター 

 切り草を敷きワラに使ってみて、結構使いやすいということが判った。俺が蜜四郎達の部屋の糞剥がしをしている間に、妻が他の部屋の糞出しをして、大喜びで報告に来た。俺の方は、蜜四郎や茂太郎の妨害を受けながら、大量に堆積した敷きワラを剥がし終えた。
 
 牧草を刈り取ったときの雨は嫌なものなのだが、草地や水場の干上がり方を見ると、もっと強く降ってくれてもいいのにと思ってしまう。春先に溜め池を掘っていなかったら、とっくの昔に放牧牛の飲み水が無くなって、牧区を別けることが不可能になるところだった。この程度の雨では、溜め池に水が増えることは無さそうだ。
 
 頭の調子の悪い俺を心配して、友人が来てくれた。忙しい中でも、カウンセリングを受ける時間を取るべきだとアドバイスを受けた。わざわざ、俺のために時間を作ってきてくれてありがたかった。
 
 雨が止んだので、すぐにテッターをかけに行く。雨上がりに走れるような斜面ではないのだが、この程度の雨では滑らないという判断と、濡れたまま日に当たって蒸れると、本当に使い物にならない乾草になると思ったからだ。絶壁の部分では牧草が剥がれるところがあったが、概ね大丈夫だった。反転させた牧草は、まだ青々としていたが、テッターをかけ終えて帰る頃にはかなり乾いていた。
 
 娘は、日に日に可愛く、活発になっていく。感情表現も豊かで、とても判りやすい。俺の口数が少ないため、語彙はなかなか増えない。お父さんやお母さんと言えないのに、『美味しい』『マロン』『カイト』『マンマ』『ジュース』などは使う。
 状況はものすごく観察して理解しているようで、『コロンしてお尻キレイキレイ』というと、おしめを替えやすいようにするし、服を脱ぐための万歳もかなり前から判る。哺乳瓶を見せると自ら横になって飲む態勢になり、飯の時肉が食べたければ俺に、豆腐などが食べたければ妻にフォークを渡す。
食事の時に、イスの上に立ち上がることがあり、それを止めさせようと『危ないよ。』と言いつつイスをゆらすと、『なんて危ないことをするんだ!』と怒りの眼差しで俺を見る。ゆらしたから危ないということが判っているのだ。