苦しみの白老市場2

 「いつまで寝てるんですか。牛の世話(水と牧草)全部終わりましたよ!」
いつもは、誰かしら一緒にいるので、何となく起きてやるのだ。頭の痛いのは治っていなかったが、あとからこういう嫌みを言うくらいなら、行くとき起こしてくれればいいのに!と甘えた考えがよぎってしまう。
 がに股で、腰を曲げて歩く姿を見て、
「師匠のマネをしてるのか〜?」
と、隣町の生産者の人が声をかけてくれた。朝までかかって、牧草をラップし、一人で転がした話をしたら
「ベールグリッパーを買うか?」
その人は、複数持っているのだ。俺は当分、買う金はない!
 
「ラベルつけるぞ〜!」
課長が教えてくれたので、今度は一緒に仕事をすることが出来た。
「あと、何かありますか?」
と聞いたら無いと言うので、自分の牛をブラッシングした。
 
 長万部の生産者の女性が話しかけてくれ、俺がブラッシングしている間、これまでの苦労話を話してくれた。頑張ってねと言われ、ちょっと元気が出た。
 
 市場が始まった。先月より、相場が上がっているのを感じた。同じ父牛でも、掛け合わせによって大きく評価が違うのが判り、何となく傾向をつかむことが出来たのだが、これから種付けをしても、出荷するまでには2年近くかかるのだ。
 俺の牛は、雪三郎以外はそれなりに評価され、まあまあの値段を付けてもらった。
 
 さて、帰るのは一苦労だ。寝不足と疲労と頭痛が重なって、無事に瀬棚に帰り着くか、自信がなかった。いつもの肉屋さんに寄って、2.5kgの黒毛和牛肉を購入した。友達に頼まれたり、宣伝するための贈り物だ。
 結局、途中で1時間仮眠をとり、やっとの思いで家に帰ると、娘が大歓迎してくれた。