39度の熱 午前3時半までの残業

 娘は食欲もあり、元気もそれなりにあるのだが、熱を計ると39度だ。昨夜から、大量のポカリスエットを飲んでおり、それに伴い大量のシッコをした。
 今日は大変な日なので、妻に娘をお願いし、クイック朝牛舎の後、刈り取った牧草をレーキで集めに行った。早刈りなので草量が少ない為、レーキで3回走って牧草の列を作った(普通の1.5倍集まる)。尾根筋な為、せっかく作った牧草の列が乱れるが、細かいことは気にしている暇がない。
 
 集め終わった後、トラクターで師匠の家に行き、ラッピングマシンを買うことになった。借りる予定だったのだが、買い取ればこちらも気が楽だ。問題は、値段が未定であることと、ベールグリッパーがないので、ラップした牧草ロールを置く平らな場所を探すことだ。急遽、堆肥舎脇をトラクターでおおよそ平らに均し、なんとか20個ぐらいは置ける場所を作った。
 
 さて、問題のロールベーラーである。牧草を拾う爪(タイン)が半分くらいしかないので(普通、冬の間に整備しておく)、どれくらいの仕事が出来るか不安である。ベルトも2カ所切れかかっているが、修理する部品は1組しかない。
 いつもよりゆっくりと丁寧にロールしていく。ラップするので、固めにロールしたつもりだが、あまり変わらなかった。なんとか明るいうちに、22個のロールが出来た。(たったの22個と笑わないでください!)
 すぐに修理に掛かれる場所に、ロールベーラーの口を開けた状態で置く。そのまま、昨年ちょっと改造して11ロール積めるようになったトレーラーで、草地に向かう。
 
 途中、妊娠牛の群れに、臨月に入ったナカボクが見えた。モクシが取れているので捕まえにくいのだが、馬調教用の長ムチを持って捕まえに行く。さりげなくプレッシャーをかけながら、ゲートを開けて周辺の関係ない牛を遠ざけ、一番遠い場所にいたナカボクをゲートの方に導く。走られたら、追いつける自信がないのでゆっくり追って、上手く一頭だけ牛舎側に追い戻すことが出来た。配合飼料を与えて、子牛が大きくなるようにおまじないをかけるのだ。
 
 急いで草地にロールを取りに行っていたら、トレーラーの前部に取り付けた、牧草が転がり落ちない為の柵が、とうとう錆びて脱落してしまった。『なんて日に、こんなことが起こるんだ』と思いつつ、クソ重たい柵を拾い上げ、トレーラに縛り付けてとにかく作業続行!
 柵が取れたので、トレーラーには8個しか積めない。バケットで2個付き刺して10個を運ぶ。ロールベーラーが帰ったときに2個運んでいた。
 とりあえず、飯に帰る。妻に、犬達を雨の中、夜中まで付き合わせるのが可哀想だから、部屋に入れてエサをやるように頼んだ。
 ラップ作業を始めてしばらくしたら、なぜかゴロウがいた。しとしと降る雨の中、必死に作業している俺を、見守ってくれた。なんとか12個ラップして、所定の場所にころがし終え、夜牛舎をやる。とても心細い気持ちになるが、ゴロウがそばにいてくれてよかった。
 真夜中に、山の上まで残りのロールを取りに行く。ゴロウはお供で着いてきた。雨は霧雨になっており、ずぶ濡れのロールをラップしないですんだのは良かった。一人でラッピングマシンに積み込み、ラップフィルムを巻き付け、隙間無くしっかりと巻いたら、一人で所定の場所に転がしていくのだ。重量は、350kgははるかに超えている。
 終わったのは3時半だった。既にあたりは明るくなっており、鳥が鳴いていた。重作業の残業は辛いが、牧草収穫は天気との勝負だ。シャワーを浴びて布団に行くと、娘が目を醒ましてしまった。カッコウの声を聴き、
「コッコー!コッコー!」
と鳴き真似をして、俺や妻を揺さぶって起こそうとする。
 ちなみにゴロウは、一旦家に入れてもらい、エサを食べた後
「僕はどうしても行かなければならないんです。」
と妻に言って、出してもらって俺のところに来たそうだ。胸がキュンとした。