Full life.

 野田知佑が、カナダの川下り中の生活を表現した言葉である。大自然の中では、全神経を使って感じ、考え、行動すると言う意味で使ってあった。
 
 今の俺は、俺自身がカナダのピース川・マッケンジー川を降っていた頃より、全身全霊を使って生きている。
 
 今朝も、病気の娘と、夜中の看病に疲れた妻を残し、牛舎に行き子牛に水と牧草と配合飼料を与え、親牛達に発情している牛がいないかチェックする。
 
 帰宅したら、娘は朝食がほとんど食べられなかったという。俺は、妻と二人分の冷凍ピザを焼き、昼飯のために自家製ワラビ入り五目ご飯を仕込む。ピザが焼ける間に、台所いっぱいの食器を洗う。
 食べたらすぐに仕事に行きたいのだが、妻が掃除する間俺は娘の遊び相手になる。39度近い高熱の娘の反応を見ながら、少しでも楽しい気分にさせる工夫をする。
 娘がウンチをしたので、
「コロンして、お尻綺麗キレイしよう!」
と言って寝かせたところで、妻が掃除を終えて来てくれた。
 
 俺はそのままトラクターに乗り、1600kgの肥料を、2回に別けて牧草地に散布した。昨日、機械の不調を改良するためにした溶接作業が功を奏して、今日は快調にブロードキャスターが働いてくれた。
 
 牧草散布しながら観察しているうちに、いつもモモカという牛が脱柵する場所が見当ついたので、トラクターを止めて電気牧柵のケーブルの高さを変更する。
 その間に、農協に電話して、さらに800kgの肥料を注文したのだが、大袋ではなく20kgの小袋40袋で来た。
 
 昼から獣医さんが馬(マロン)の治療に来ると言うので、妊娠確認してもらう牛を広い放牧地に捕まえに行く。俺の焦りが伝わって、いつもなら簡単に捕まるサチコが逃げわり大汗をかくと共に、時間がかかりすぎて給油中のトラクターから軽油が溢れ出す。
 
 1時過ぎ、ようやく昼飯に帰る。せっかく準備していった炊き込みご飯だが、娘はあまり食べられなかったという。
 娘が使った皿で、炊き込みご飯を食っている最中に、獣医さんが来てくれた。慌てて治療するマロンという馬を探しに行く。今日は、アスパラ畑にいた。今後は、俺たちが治療を継続することになった。
 サチコは、超音波診断装置を使って、子牛が入っているのを確認。妊娠牛の放牧地へ移動。
 
 ファックスのインクフィルム・EMボカシ用米ぬか90kg・家庭用ネコのシリカサンド・ミニトマトあいこの苗等を買いに行くが、フィルムは注文中・ボカシは手に入る・シリカサンドとあいこの苗は、北桧山にも今金町にも無かったので、仕方なく夕食の食材を買って帰る。
 
 食材を冷蔵庫に入れ、座ることなく40袋800kgの肥料を一つ一つ担いで機械に入れ、友人から借りることになった草地に散布しに行く。収穫するときのために、地形を覚える。
 
 帰宅したら、娘は熱で、妻は看病で疲れ切っていた。食事を取れないらしい。なんで診療所に連れて行かないと、時計を見たら5時だった。
 こういう時のために買っておいたリッツを取りだして、妻に試してもらったら、娘は喜んで食べ始めた。俺は、晩飯前の夜牛舎を諦め、娘がいつも喜んで食べるラムとインゲンのホールトマトがけを作り、炊き込みご飯と一緒に食べさせたら、娘は食べ始めてくれた。妻が作ったおかゆも食べ、食欲不振に対する不安は解消!熱を計ると、やはり39度弱だ。下痢もひどいらしい。
 夜牛舎前に、ドラッグストアーにおむつと子供用ポカリスエットを買いに行く。
 牛舎に行くと、エサや牧草が綺麗に食べてあったが、蜜四郎か茂太郎が下痢をしている。糖蜜液にエクテシンを入れて飲ませる。糞出しが間に合わないので、EMボカシを大量に散布して、明日以降天気が崩れたとき行うことにする。切り草も無くなってしまい、明日の朝一番に作ることになった。
 
 余っている炊き込みご飯を冷凍し、明日の朝のためにパン焼き器のセットをする。それでも、愛犬ゴロウとカイトのブラッシングは欠かさない。