白老市場 すき焼きフィーバー 

 早朝から起きて、瀬棚の牛達に水と牧草をやり、運古を剥がす。モクシや引き綱を出荷用のものに付け替え、自分の牛をもう少しブラッシングする。トマトがあまりにも大人しくブラッシングさせていたので、仲買人に
「エライ大人しいけど、体調が悪いんじゃないよね?」
と聞かれたほどだ。
 
 市場が始まって感じたことは、思ったほど値段が付かないということだ。特に増体系の血統の牛は、よほど増体が良くないと値段が伸びない。高騰しすぎた子牛市場なので、仲買人もかなりシビアになっているようだ。生後3ヶ月の時肺炎を患い、時々咳をするという血統の良い子牛が出てきたが、5万円で買われていった。俺なら、売らずに持ち帰って、肥育に挑戦すると思うが・・・。
 
 現在の市場では、雄なら50万円、牝でも40万円は欲しい。しかし、今日はそれに達しない子牛が続出していた。そして、それでも本当に良い牛は全く値下がりしなかった。
 俺の牛は、体重の割りにはいい値段が付いた。しかし、増体の良いトマトの方が、レイより安かったのはちょっと不満(>_<)。
 
 黒毛和牛のすき焼き肉を買って、家路につく。御歳19歳のハイラックスは、元気に高速道路を走った。山は新芽とコブシの白、山桜の赤と微妙に混ざり合った春紅葉となっており、のどかなドライブだった。
 
 生まれて初めて黒毛和牛のすき焼きを食べた娘は、その美味さに雄叫びを上げ、目の色を変えてむさぼり食った。味が濃すぎるので、俺が一旦咥えて小さく噛み千切って食べさせるのだが、俺の動きをよく見ており、肉を取ったら早く寄こせと催促するのだ。俺は娘が食い終わるまで、ほとんど食べることが出来なかった。
 娘はこれまでも、オージービーフやラム肉などを食べて肉は大好きになっていたが、黒毛和牛の美味さへの感動の表現は、生産者としてとても嬉しかった。
 
 その後も、ウンチをしておしめを交換する手伝いや、風呂から上がった娘を受け取ったりで、落ち着いてすき焼きを食べることが出来なかった。でも、喜んでもらえて嬉しい\(^O^)/。